第十八幕
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「なに……あれ……」
カイが飛んでから数分後、巨人の足音と地響きは少しずつ下がっていった。そして援護に来た兵士たちの悲鳴も消える。
「なんだよありゃ……」
ペトラとオルオが後ろを振り向いて何かを見ているようだが、エレンは怖くて振り向けなかった。
──うん。そばに居るよ。
「(嘘つき……!そう言って戻らなかったんだ!どうせ今だって!!)」
あの巨人を前にして戻れるはずがない。ここまで何人もの兵士が犠牲になった。きっとカイも死んでしまっている。
「(どうして……どうしてリヴァイ兵長はカイを行かせたんだ!!あれだけ大切にしていたのに。カイの事を大事にしてたんじゃないのか!)」
ことある事にリヴァイはカイのそばに居た。長い付き合いがあるとカイから聞いていたから、友人であればなんら不思議はないと。
ミカサとアルミンとつるんでいるのと同じなんだと思っていた。カイのリヴァイに対しての態度も。だが、リヴァイはそうではない。あの人はカイのことを友人としてみていない。
「(一緒のはずだ……リヴァイ兵長もカイのことを……!)」
好きなはず。でなければあんなにもカイに対して執着しない。ただ単に友人に優しく接しているとかの話ではなかった。
エレンがカイに話しかけようとする度に牽制するような目。まるでカイに触れるなと言っているように見えた。
確実にリヴァイはカイに気がある。
「(それなのに何故!カイが死んでもいいのか!!)」
怒りを抑えようと手綱を強く握る。そんなものではこの腹の中に渦巻いている熱は発散されない。でもここでぶちまけてもきっと楽にはなれないだろう。
「(カイ、カイ!!)」
苦しい。このまま逃げ続けても意味が無い。カイが後ろに居ないことがとても怖い。そばに居ると言ったのに。どうして。
「くっ……カイ!」
悔しさで視界が潤んでいく。そんな状況で、後ろで走っているエルドの呟きが聞こえた。
「あれはまるで……"鳥"だ……自由に飛び回る鳥じゃないか」
"鳥"
その言葉にハッとしてエレンは後方を振り向く。
「あっ……カイ……」
巨人の周りを動き回る何か。その何かを巨人はウザったそうに振り払っていた。
「あんな動き見たことないぞ……どうやってんだ」
「私たちとやった訓練でもみたことないわ」
巨人の周囲を飛び回る姿は確かに鳥だ。捕まえようと手を伸ばしてもカイはその手をするりと躱す。何度もそんなことを繰り返しているから巨人の方も苛立ってきたのか、段々と速度が落ちてカイを捕まえることに夢中になっていた。
「だから言っただろう。やつは一人で十分だと」
リヴァイの言葉に誰もが口を噤む。文句のつけようがなかった。
.