第十七幕
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「まだ一人戦ってます!今ならまだ間に合う!」
「エレン!前を向いて走りなさい!」
「戦いから目を背けろっていうんですか!?仲間を見殺しにして逃げろってことですか!?」
「ええ、そうよ!兵長の指示に従いなさい」
痛い。目の前で繰り広げられている言葉がどれも痛い。
「見殺しにする理由が分かりません!それを説明しない理由もわからない。何故です!?」
「兵長が説明すべきでないと判断したからだ!それがわからないのはお前がヒヨッコだからだ!分かったら黙って従え!」
自分は仲間を見殺しにしたときその理由を言っただろうか。彼らにもう助からないから死んでくれと。
『言ったこと……あったっけ』
「カイ」
『え?あ……』
エレンの言葉に俯くと、リヴァイに声をかけられる。
振り返ることはないけれど、何を言いたいのかはわかった。
『そうだな。振り返ったところで何も変わらない』
巨人の足音が、振動が徐々に追いついてきている。味方がなんとか食い止めようとしてくれているが、彼らの願いも虚しく散ってしまった。
『リヴァイ』
「わかった」
リヴァイが頷くのを見てから、立体機動に移る準備を始める。
「え……カイ!!」
「な、何をするの!カイ、やめなさい!」
「おい!てめえ勝手なことをするな!」
「騒ぐな。そいつの仕事だ」
「兵長!カイ一人では戦えません!私たちも出るべきです!」
「必要ない。カイ一人で十分だ」
「待ってください!カイが出るなら俺が──」
『エレン、お前約束したろ?』
「でも……!!」
『でももだってもない。約束は約束だ。"それを使うのは自分が危なくなったときだけ"お前ちゃんと了承したじゃん』
「今そんなこと言ってられる状況じゃないだろ!?カイが行くって言うなら俺もッ」
『必要ないって言われただろうが。まったく……人の話はちゃんと聞けよ。よくそれで訓練兵団をやってこれたな』
十年前であれば即、兵団から叩き出されていたであろう。今は兵士の数が足りていないから許されただろうけど。
「カイッ!!」
『しつこい!お前は黙って前を見て走れ!!』
エレンに向かって怒鳴ると、ビクッと肩を揺らして口を引き結ぶ。
『大丈夫だって。すぐ戻る』
「……っ……そう言って……戻らなかったじゃねぇか!」
──どこに行ってたんだよ!ずっと探したのに!
エレンの顔を見て目を見開く。この顔を見るのはこれで二度目だ。
訓練兵を終えて家に戻ったとき、エレンはカイに飛びついてきて泣きそうな声で怒った。何度もカイの胸を叩いては、心配したんだと喚いて。
ああ、あの後すぐに自分は調査兵団へと行ってしまった。一番大事なときに。傍にいなければいけないときにカイは巨人と戦っていた。
『エレン……悪かった』
「謝るなよ……謝るなら……!!」
『うん。そばに居るよ』
次は必ず戻る。もう寂しい思いはさせない。
「カイ、必ず戻れ」
『了解。アデライン、いいか?このままついていけ。俺についてくるな。そうだな……"エレンについていけ"』
アデラインは鼻を鳴らして返事をし、エレンとの距離を詰める。
『さて、仕事だ』
エレンの引き止める声を背にして飛ぶ。近くの木にアンカーを飛ばし、巨人の後ろへと回った。
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