第十七幕
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「兵長、リヴァイ兵長!」
「なんだ?」
「なんだって……ここ森ですよ。中列だけこんなに森の中に入ってたら巨人の接近に気づけません。右から何か来ているみたいだし、どうやって巨人を回避したり荷馬車班を守ったりするんですか?」
「分かりきったことをピーピーわめくな。もうそんなこと出来るわけねぇだろ」
「え……なぜ、そんな……」
「周りをよく見ろエレン。この無駄にクソデカい木を。立体機動装置の機能を生かすには絶好の環境だ。そして考えろ。お前のその大したことない頭でな。死にたくなきゃ必死に頭回せ」
「はい!」
何故だと問いかけたエレンにリヴァイは冷たくも説明をしてくれる。
初めての壁外遠征で焦っているのかもしれない。右翼側から来ている得体の知れないものに怯え、状況を上手く飲み込めていない。
それは経験がないからだ。この状況に陥った場合、こうした方がいいという予測が出来ない。予測というのは経験則に基づくものだ。自分にはそれが圧倒的に足りていない。だからこうして慌ててしまう。
「(何もかもを聞いて教えてもらうんじゃない。自分で考えて動くんだ。そうやって先輩たちも戦いを学んできたんだ)」
そう思って隣を走っているオルオへと目を向ける。きっと彼らは冷静にこの状況を考えているのだろうと。
「あ……」
オルオは冷や汗を垂らしながらブツブツと文句を垂れていた。まさかと思って周囲を見渡す。ペトラもエルドもグンタもオルオと同じく険しい表情。
リヴァイ班の誰もがエレンと同じように状況を飲み込めていなかった。
「(そんな……誰もこの状況を理解出来ていないのか?もしかしたらリヴァイ兵長でさえも……)」
リヴァイの背中を見た時、エレンはハッと後ろを振り返る。
自分の真後ろを走る彼の表情を見て、エレンは呆気に取られた。
「(なんで……なんでカイは平気そうなんだ)」
振り返った先に見えたのは穏やかな顔。目が合った瞬間、カイはいつもの柔らかい笑みをエレンに見せた。
「(何がどうなってるんだ!班のみんなもリヴァイ兵長も、そしてこんな状況なのに笑ってるカイも)」
おかしいのは自分か、はたまた周りの人間か。混乱していく頭を必死に整理しようと考えるも答えなど見つかるはずもない。
『エレン』
「な、なに……」
『大丈夫。後ろは守るから』
「はっ……」
だから前を向いて走れと言ったカイはとても綺麗に微笑んだ。
「カイ、」
なんだか嫌な予感がする。
『うん?』
どこにも行かないで欲しい。そう言えたらどれだけ楽か。
「なんでも、ない」
『そ?じゃあ前向いて走ろうな?危ないから』
言われた通りにエレンは向き直る。前方では変わらずリヴァイが走り続けているし、横ではオルオとペトラは相変わらず暗い表情。
何を信じて走ればいいのか分からなくなる。でも、カイが前を見て走れというのなら。
「(進むしかない……)」
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