第十七幕
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「なんだか凄く感動的だね。またこうしてカイと壁外に出られるなんて」
『別にそんなでもないだろ。そう思ってんのはハンジだけだぞ?』
「そんなことないよ!リヴァイ、あなただってカイとまた行動出来て嬉しいだろう?」
はしゃぐハンジに対してリヴァイは目を細め、面倒くさそうに呟く。
「フラフラしてねぇで自分の持ち場に戻れ」
「素っ気ないなぁ。はいはい。戻りますよ。じゃあまたねカイ」
ひらひらっと手を振ってハンジは馬を歩かせる。戻った先でモブリットに怒られているのが見え、彼もかなりの苦労人だなと苦笑いを漏らした。
「カイ」
『んー?』
「お前は後方につけ」
『あれ、後ろは確かエルドとグンタがつくんじゃなかったのか?』
「その二人の後ろだ」
『殿を任せられるほど俺の腕は良くないけど』
グンタとエルドの後ろ。それはエレンの真後ろになる。班の最後尾ともなれば、それなりの責任が伴ってくるだろう。
「文句言ってないで後ろにいけ。この中でお前が適役だ」
『うっわ、責任重大。なんで俺が……』
言われた通りに最後尾へとつくと、前方のエレンが不安げな顔でこちらを振り返った。
「大丈夫なのか?」
『多分?』
「多分って……何かあればすぐに──」
「エレン、お前は前だけ見てろ。後ろのことは気にしなくていい」
少しくらいは気にして欲しいと思う。久しぶりの壁外なのになんでこんな所に配置されるのやら。もっと手馴れている人間に任せればいいものを。
『まったく、しかもガスの替えまで持たされるし』
信煙弾と共にリヴァイにガス缶を二本渡された。この一ヶ月の間にガスの調整はある程度まで取り戻せているから必要ないと言ったのだが、リヴァイはカイの言葉など一切聞かずに持っていけと一言。
ガス缶の替えを直接持ってきているのはカイだけだ。他の者達は補給班から受け取るようになっている。なんだか遠足のお弁当を持たされた気分だ。
『まあいいけどさ。久しぶりだし?一ヶ月しか立体機動使ってないし?ガス欠起こせば使い物にならなくなるからな』
ぶつくさと文句を零しながら空を見上げる。今日も雲ひとつない晴天。遠足日和ならぬ壁外調査日和だ。
『今日もいい天気だなぁ』
「ちょっとカイ、そんな呑気なこといってないで」
「お気楽なもんだな。これから壁の外に出るってのによ」
ペトラとオルオに呆れた顔をされ、カイはむくれる。これくらい気を抜いてなければやっていけないだろう。ガチガチに緊張していては判断も鈍ってしまう。
グチグチと文句を言われている中、彼らよりも前に居る奴がちらりと振り返る。
『(うわ、また怒られんのか)』
リヴァイと目がかち合い、カイは身構える。今度はなんて怒られるのだろうかと冷や冷やしながら待ち構えたが、どれだけ待ってもリヴァイが口を開くことは無かった。
ただカイを見ただけでリヴァイはまた前を向く。
『なんだ?今の』
なんだか拍子抜けしてしまった。別に怒られたかった訳でもないが。
門が開くのが聞こえ、手綱を握り直す。壁外調査の開始合図が響き渡り、続々と前が動き出した。
『アデライン、今回もよろしくな』
愛馬の頭を撫で、カイも動き出す。
三年ぶりの壁外調査。だが、今回はただの壁外調査ではない。色んな思惑が絡み合ったもの。どこまで上手くいくかわからない。出来れば何事もなく終わって欲しい。
『行こう、アデライン』
前を走るリヴァイの背中を見る。風に揺らめく自由の翼。
『本当に翼があったら……良かったのに』
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