第十六幕
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「こんなことして大丈夫なのかよ!もしリヴァイ兵長に見つかったら!」
『大丈夫大丈夫。見つかっても俺が連れ出したって言えばいいんだから』
こっそりと城を抜け出し、エレンと共に周囲をフラフラと歩く。
『今日は晴れてたから月がよく見えるな』
夜空に浮かぶ満月。灯りのないこの場所で唯一の光源だ。月が出ていなかったら夜散歩は断念していただろう。
程よく歩いたところで、カイは地面に座って寝転ぶ。
見上げた先は満天の星。月の存在があまりにも大きすぎたせいで見逃してしまっていたが、周囲にある星々も月に負けないほど輝いていた。
『久しぶりにこんなゆっくりと空を見るなぁ』
カイの隣にエレンも寝転び、一緒に空を見る。
「こんなに綺麗だったんだな」
『ここ最近は前ばっか見てたから忘れてたなぁ。たまには空を見上げるのもいいかも』
上を見ている暇なんてなかった。そんな余裕があるなら仲間の顔を目に焼き付けようと必死だったから。一瞬にして消えていく命を見逃さないように。
「カイ、聞きたいことがあるんだけど」
『んー?どうした?』
「その……リヴァイ兵長と……仲良い……のか?」
『仲が良いのかはわかんねぇけど、それなりの付き合いだなぁ』
「それなり……」
もしかして昼間のあの口喧嘩のことを気にしているのだろうか。それなら何も心配はいらないのに。
『俺が調査兵団に居たのは三年くらいの間だったんだけど、二年くらいはリヴァイと行動してたんだよ』
最初の一年は生き残るのに必死だった。仲間が次々に死んでいく中で、生きて帰ることだけを考えていた。そうして一年が経過したとき、リヴァイやハンジと言葉を交わすことが多くなった。
『最初は歳上だと思わなかったんだよな』
口の悪いクソガキ。それが第一印象だった。エレンも近所の子供とよく喧嘩していたから、リヴァイも似たようなものかと思って見ていた。それがまさか自分より歳上だとは。
──随分と……その可愛らしい見た目で。
──てめえ、今すぐそのふざけた口を閉じろ。
その後すぐ蹴り飛ばされたのは良い思い出……ではないけれど。衝撃的な出会いだったせいか、あの日のことはハッキリと覚えている。
『なんやかんやとあったけど、今では口喧嘩を普通に出来る仲にはなったのか。向こうがどう思ってるのかは分からないけど……俺は大切な仲間だと思ってるよ』
リヴァイのそばに居るのが当たり前で、些細なことで口喧嘩をするのが日常で。それがずっと続いていくんだと。変わらずに居てくれるんだと思っていた。
そんな事ありえないのに。必ず終わりが来る。自分かリヴァイが死ぬ時が来てしまう。巨人に食い殺される日が。今日か明日かと不安に思い始めたとき、カイは目を背けてしまった。
失うことにもう慣れたと思っていた。仲間が死ぬのは仕方ないことなんだと割り切っていたと思っていたのに。
『仲間を失うのが怖くて調査兵団を抜けたんだ。抜けたところでリヴァイたちが死なないわけじゃないのに。あいつらの死体を直接見たくなくて逃げた。そんな理由で憲兵に行ったんだ』
今でも怖いと思う。でも、逃げていても変わらない。リヴァイたちは死と隣り合わせの場所に居続ける。
「なんで戻ろうって思ったんだ?」
『戻ってこいって言われたのもあるけど……あいつらが死なないように守ればいいのか、って』
人類最強を守るなんて馬鹿なことをと言われるだろう。でも、同じ人間なのだからリヴァイだって危険な目に遭うことだってある。その時に守れたら。
『少しでもリヴァイたちの寿命を伸ばせるのなら。調査兵に戻ったほうがいいなってさ』
こんなことをリヴァイに言おうものなら必要ないって跳ね除けられそうだけども。
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