第十六幕
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「トイレに行きたかったから巨人化した……?」
『なんか改めて言われると笑うからやめてくれ』
「カイが言ったんだろう?」
『俺っていうかエレンがだけど』
地下でエレンに聞いたらそう言われた。巨人化する間際、トイレに行きたくてカイを引き留めようとしたと。
「ということはなんだい?エレンはトイレに行きたくてカイを引き留めようとした。それが巨人化した理由ってこと?」
『トイレというか、巨人化するのに必要な要素だな。今までは"自傷行為"だけだと思ってたが、それは井戸での実験で違うことが立証された。自傷行為を行った上で別の要因があり、それがなんなのかと考えてみた結果、仮定ではあるけど』
「"明確な目的"が必要だってことになったんだね。そうか、これまで巨人化したときは何かしらの目的があったんだもんね。巨人を倒す、榴弾を防ぐ、大岩で穴を塞ぐ……どれも明確な目的だ」
「おい。ということはこいつは井戸の中ではなんの目的もなかったってことか」
『そうなる。単純に巨人化しようっていうくらいの気持ちじゃなれないんだろ。ある意味では制限がかかってるってことだ』
巨人化するのに強い意思が必要になる。こうしたいという理由がなければエレンは巨人化出来ない。
「なるほど……これはエルヴィンに報告するべきだね」
『そっちは頼んだ』
「ああ、私から実験の結果として伝えておくよ。それよりもエレン、ごめんね。巨人化してしまうほどトイレを我慢させてたんだね」
一身に哀れみの目を浴びたエレンは恥ずかしそうに俯く。
「す、すみません……」
「いいんだよ。生理的欲求だから仕方ないさ。リヴァイたちが早く戻ってきてくれれば実験も早く出来たのに」
『それは申し訳ない。練習に夢中になってた』
これは文句を言われても仕方ない。ハンジたちを随分と待たせてしまったようだから。
「ねぇ、エレン。なんでさっきから耳を押さえているの?」
「えっ、あ、いやこれは……ちょっと」
「どうした」
「兵長、エレンがさっきから耳を押さえてるんです」
「エレン、何してるんだ」
ペトラがエレンの異変に気づいてリヴァイに訴える。何かあったのかと皆がゾロゾロと集まりだし、エレンは耳を押さえたまま狼狽える。
「ち、違うんです……その……」
「うわ、エレン君、耳が真っ赤だよ。大丈夫かい?」
「えっと……」
『そりゃ全員で覗き込まれるように見られたら恥ずかしいだろ。巨人化した理由だって"トイレに行きたかった"じゃ情けないって思っちゃうだろうが』
それもそうかと納得しているハンジたちにため息を零しつつ、カイはじっとエレンを見る。
視線から解放されたエレンはほっとした顔をしているが未だに耳は赤いまま。
『(あいつ、何を隠してるんだ?)』
ただ恥ずかしかった、だけならいい。エレンの癖に"嘘をつくと耳が赤くなる"というのがある。
もし、嘘をついて赤くしているなら。
どこからどこまでが嘘なのか。それによって事情が変わってくる。
問いただしたいところだが、今はやめておいた方がいいだろう。人が、特にリヴァイ班がいるところでは黙っておいた方がいい。
和解したとはいえ、信用されていなかったと突きつけられれば誰だって不信感を抱いてしまうから。
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