第十六幕
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「さっきは……ごめん」
『うん?ああ、気にしなくていいよ。それよりエレン、ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいか?』
「な、なに……」
旧本部から戻ってきてから、カイはエレンを地下へと連れていった。改めて今日の実験のことを考えるために。
『さっき巨人化したとき、何か考え事でもしてたのか?』
「考え事?」
『そ。あー、今この瞬間巨人化したいなぁ、とか』
「そんな事考えるわけないだろ!?」
『だよなぁ』
「井戸の中でわざと巨人化しなかったと思ってるのかよ」
『いや、それはない』
「なんで、そう言い切れるんだ」
『あれだけ噛みまくってて、しかもあの困惑した顔を見てれば分かる』
ごろんっとベッドに横になって天井を見上げる。
エレンが巨人化した理由がどこかにあるはずだ。なぜあのタイミングだったのか。どうして井戸の中では巨人化出来なかったのか。
『一度整理しようか。一番最初に巨人化した時のこと覚えてるか?トロスト区で大暴れしてたときの』
「あまり覚えてない……ただ、巨人をぶっ殺したいって思ったのは覚えてる」
『暴れまわってた時の記憶はないんだもんな。そりゃわかんねぇか。じゃあ二度目の時は?あの子、アルミンって子から聞いたけど、キッツに榴弾撃たれたとき防いだんだって?』
「ああ。でもあれも咄嗟にやったんだ。何が何だか分からなくて。ただ、ミカサとアルミンを守らねぇとって」
『榴弾撃ち込まれるなんて思わないもんなぁ。ちなみにちゃんとやり返しておいたから』
「やり返した?」
『うん。しっかりと』
医務室から出たあと、リヴァイとハンジの目を盗んでカイは駐屯兵団へと向かった。そして呑気に仕事していたキッツを後ろから一発殴ったのだ。
周りの兵士たちに取り押さえられてしまったから一発しか殴れなかった。その後は大事になることはなく、ピクシスに一言怒られただけで済んだ。喚き散らしていたキッツに次はないと言ってきたので、キッツがまたエレンたちに危害を加えることは無いだろう。
「そんなことしたのかよ」
『ムカつくだろ。だからやった』
「ムカつくって……そんな理由で」
『俺にとっては大きな理由なんだよ。つっても、あの場に残らなかった俺が悪いんだけどな』
その場を離れてしまったからキッツがあのような凶行に走ったとも考えられる。最初からカイが説得していれば榴弾が撃ち込まれるなんてことは起こらなかったかもしれない。
『キッツの話はいいとして、次は穴を塞いだときだ。あの時は?』
「あれは穴を塞ぐことだけを考えてた。でも巨人化した俺はミカサを……」
『殴った。別にミカサに対して怒ってたわけじゃないんだろ?』
「そうじゃない。あの時も記憶が曖昧なんだ。アルミンが声を掛けてくれたから岩を運べたけど」
『ふむ。それらを踏まえて、さっきの巨人化だ。エレン、巨人化する前。いや、あの瞬間、なにを考えてた?』
「なにって……」
『これまでの巨人化の経緯を考えると、ある法則が生まれるんだよ』
エレンが巨人化をするのに必要なのは自傷行為だと思われていた。たまが今回、自傷行為だけでは巨人化出来ないことが立証された。
自傷行為だけが巨人化になるトリガーではない。他にも要因がある。
『エレン』
ベッドから起き上がってエレンと真正面で向き合う。
『あの時、何をしたいって思ったんだ?』
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