第十五幕
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『よし、これで大丈夫なはず』
「ありがとう」
『どういたしまして』
噛み跡だらけだったエレンの両手は包帯に包まれた。痛みのせいか手の動きがきごちなく、カップを取るのも大変そうだ。
『口元まで運んでやろうか?』
「そ、そこまではいい!」
飲みやすいようにとカップをエレンの口元まで持っていったが、リヴァイに横から押さえ込まれる。
「甘やかすな」
『しょうがないだろ?手が使えないんだから』
「それはこいつの問題だ。巨人にもなれねぇ、傷口も塞がらないんじゃどうしようもない」
リヴァイから鋭い目を向けられ、エレンは萎縮して小さな声で返事をする。その姿があまりにも可哀想で、カイは庇うようにリヴァイとエレンの間に手を伸ばす。
『言っただろ自分で。そんな確実的なものじゃないって』
「こいつにはウォール・マリアを塞ぐという大義があるのを忘れたか?それが果たせないとなると、調査兵団でエレンの身柄を預かることも出来なくなる。それがどういう意味かお前は分かってるだろう」
調査兵団でエレンを匿うことが出来なくなったら。憲兵に引き取られて解剖される。それは重々承知していること。
『だからってそんな言い方はないだろうが。エレンだってよくわかってねぇんだから』
「だから実験してるんだろうが」
ため息をついたリヴァイはカイの元を離れてペトラと話し始めてしまった。その後ろ姿にやれやれと脱力する。
「カイ、」
『ん?ああ、気にしなくていいよ。口喧嘩なんかよくやってる事だし』
「でも俺のせいで……」
『エレンのせいじゃないから大丈夫。焦って物事進めようとしたって上手くいかないっての』
自分のせいでリヴァイと口論になってしまったと自責の念に駆られているエレンに微笑みかける。
『なあエレン』
「なに?」
『俺は別にエレンがこのまま巨人化出来ても出来なくてもどっちでもいいと思ってる』
「えっ──」
『そりゃエレンがウォール・マリアを奪還してくれたら助かるけど。でもそれはエレンが全責負うことになる。トロスト区の時と同じように期待され、恐れられる存在になるんだよ。俺は……お前にそんなもん背負って欲しくない』
自分やリヴァイがその責任を負うなら分かる。それなりに経験を積んできているし、突発的な出来事に対してある程度の適応力ができているから。それでも迷うことがあるというのに。
まだ右も左も分からない子にそんな重責を背負わせなければならないなんて。
『お前はもう兵士だけど。でもまだ子供なんだよ』
自分がエレンの年齢の時は何をしてただろうか。ウォール・マリアの壁が破壊される前。訓練兵団に行くか行かないかを迷っていた頃。
まだ、親に甘えて生きていたはず。
『エレン。俺にとってお前は可愛い弟みたいなもんだから』
カイを見つめる純真な瞳。その目が汚されてしまわぬように守らなければならない。
そっと頭を撫でて笑いかける。
『しんどい思いはして欲しくないな』
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