第十五幕
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緑の煙弾が撃たれる。すぐにエレンが巨人化するだろうと誰もが固唾を飲んで見守っていたが、いつまで経っても巨人が現れることは無い。
「ん?合図が伝わらなかったのかな?」
「いや、そんな確実性の高い代物でもねえだろ」
『アデライン、ちょっとここで待っててな』
アデラインから降りて井戸へと近づく。
「おい、エレン!一旦中止だ」
「何かあったの?あっ」
三人揃って井戸の中を覗くと、そこには両手が血まみれになったエレンの姿。
「ハンジさん……巨人になれません」
『巨人になれませんどころの話じゃないだろうが!!』
「カイ、待て!」
リヴァイの制止の声を振り切って井戸の中へと降りた。
「カイ、なんで……」
『なんでじゃないだろ!そんなに噛んで。一回噛んだ時点で巨人化に失敗したなら声を掛けろよ!』
「ご、ごめん」
この手ではトリガーを引くのは厳しいだろう。そう思ってカイは飛び降りた。
呆然としているエレンの腰を掴んで、トリガーを引く。アンカーが井戸の縁に引っかかったのを確認してからワイヤーを巻き取ろうと指をかける。
「カイ」
『ん?どうした?』
「カイは……怖くないのかよ」
『怖い?なにが』
「だってそうだろ!いつ巨人になるかわかんねぇのに……なんで井戸の中に飛び込んできたんだよ」
『あっ、』
「あっ、じゃねぇよ!今この瞬間、巨人化したら死ぬんだぞ!?」
考え無しに降りてきてしまった。エレンが巨人化するかもしれないということよりも、血まみれになっているエレンを早く手当しなくてはというのが一番に来てしまったから。
『エレン、待てだ。今はちょっと待ってな?』
「そんな犬みたいに言うなよ!俺だってわかんねぇのに!」
『分かった分かった!とりあえず井戸の中から出ような!?ここで巨人化されたら俺死ぬから!』
「だからさっきから言ってんだろうが!!」
『しょうがないだろ!そんなことよりお前の心配の方が勝っちゃったんだから!』
「し……は、はあ!?」
ぶわっと一気にエレンの顔が赤くなる。なんでそんな顔が赤いんだと不思議に思いつつも、カイはエレンの腰を抱いて上に飛んだ。
『とりあえずこれで安心?』
「うわあ、凄いことになってるね。エレン、どれだけ噛んだの?手も真っ赤だし……あれ、顔も真っ赤だよ?」
「顔は関係ないです……!」
今どんな感じ?とハンジに詰められ始めたエレンの顔は徐々に元に戻っていく。
「カイ、勝手な真似はするな。エレンが巨人化したらどうするつもりだ」
『なんも考えてなかった……』
言われて気づくとはどういうことだ。これは確かに危なかった。エレンが巨人化しなかったから良かったが、もしカイが降りた後に巨人化していたら井戸の中で潰されていただろう。
『おー……恐ろしいな。圧死か』
「俺のそばを離れるな」
『了解』
怒られて当然だ。次からはもう少し考えて行動しようと思う。うん。多分。
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