第十四幕
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『やらかした……』
ぷらーんと二本のワイヤーに吊るされながらカイはボソリと呟く。
リヴァイを見つけたところまでは良かった。そこから鬼ごっこが始まり、リヴァイを捕まえようとあの手この手で近づこうとした。もう少しでリヴァイを捕まえられる、というところでガス欠になってしまい、カイは振り子のように木にぶら下がっている。
『リヴァイ、ガス切れたんだけどー』
これではリヴァイを捕まえられない。鬼ごっこはカイの負けで終わった。あと少しだったのが物凄く悔しい。あそこでガス欠を起こさなければ捕まえられたはずだ。
『くっそ。めちゃくちゃ悔しいな』
これはまた挑戦したい。次はガスの調整を気をつけないと。また無駄に飛ばないように。
『リヴァイ!』
何度も呼びかけているが返事は無い。
『置いていかれたか。どうすっかな……この高さから降りたら確実に骨折れるよな……』
ガスがなくなってしまえば立体機動は使い物にならない。
リヴァイを捕まえようと躍起になっていたせいで、ガスの残量を確認していなかった。そのせいで変なところで止まってしまったのだ。アンカーを外して降りようにもかなりの高さがある。死にはしないだろうけど怪我は免れない。
『リヴァイ!!』
どれだけ呼んでもリヴァイは現れない。段々と焦りが帯びてくる。
『ちょ、リヴァイ!!お前どこまで行ってんだよ!』
悪態をついても戻ってくる感じが一切しない。このまま放置なんてされたらたまったもんじゃない。
『しょうがない……上手く受身を取れればいけるか?』
トリガーに指をかけ、アンカーを外す。地面に激突する前に立体機動を腰から外そうと手を後ろに回したとき、横から誰かに抱えられた。
「てめえ何してやがる!」
助かった、と安堵する間もなく怒鳴られる。一瞬怯みはしたが、カイは即座にリヴァイに向けて怒鳴り返した。
『遅い!何度も声掛けただろうが!どこまで行ってんだよバカ!!』
「バカはお前だろうが!あの高さから落ちるつもりだったのか!?」
『仕方ないだろ!何度声掛けても戻ってこねぇんだから!!』
本当に置いていかれたと思った。一生あのまま、ということは絶対にないだろうけど、長い時間ぶら下がっている状態は流石に辛い。アンカーが木から抜けたらそれこそ死ぬ。覚悟を決めて自分の意思で降りるか、それともいきなり落ちるかなら前者を選ぶ。
『死ぬかと、思ったんだからな』
ゾクッと鳥肌がたつ。それを紛らわせるようにリヴァイの服を掴んだ。
「悪かった」
『いい。どうせ後方確認せずに飛んでたんだろ』
「お前ならついてくるだろうと思ってたからな」
『はあ……遊ぶんじゃなかった。素直にお前のところに飛んでおけばこうはならなかったわ』
リヴァイを責めるのはお門違いだ。自分がガスを無駄に使わなければ良かったこと。しかもガスの残量を把握していなかったのも原因の一つ。
恐怖で頭がいっぱいになっていたとはいえ、リヴァイに怒鳴ってしまった。助けに来てくれたというのに。
『怒鳴って悪い。助けに……きてくれてありがとな』
「ああ。今度からは目を離さないでおく」
目を、と言ったはずなのに何故か強く抱き込まれる。カイは立体機動を付けたままだからそんなにくっついたら邪魔になるはずなのに。
『リヴァイ、地面に下ろしてくれれば向こうまで走るけど』
「面倒だ。それにどれだけ離れてると思ってる」
『え、そんな奥まで入って来てたのか』
「俺のガスももう切れる」
『うわぁ……』
これは随分と遊びすぎてしまったようだ。
『あー、うん。これはリヴァイが悪い』
「おい、てめえさっき謝ったんじゃねぇのか」
『それとは別。追い掛け甲斐があるリヴァイが悪い』
手に届かないものほど追いかけたくなる。それは人間誰しもそうだ。人類最強と謳われている人物を捕まえられたら、と考えたら誰だって夢中になってしまうだろう。
『次からはアデライン連れてこよ』
「次があればの話だ」
『どうせ付き合ってくれるだろ?』
「さあな」
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