第十四幕
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「遅い」
森の中に入ってからどれだけの時間が経っただろうか。待てど暮らせど、カイがリヴァイを見つける気配がない。
「何をやってるんだあのバカは」
これだけ分かりやすい所に立っているというのに。
森の中で一番太いであろう木の中腹に立っているリヴァイは腕を組みながら飛んできた方を振り返る。
目に映るのは木々のみ。聞こえてくるのは風に吹かれた木の葉の音色。立体機動の音など聞こえもしない。
「(最初から飛ばしすぎたか?)」
オルオとペトラの相手をしていたのだから問題ないだろうと思っていた。感覚が鈍っていると言っていた割には二人を呆気なく捕まえてきたのだ。リヴァイほどではないにしろ、あの二人は調査兵団の中で優秀な戦績をあげている。そんな二人相手に笑って戻ってきたのだから手加減は要らないだろうと。
別に他意はない。オルオとペトラの相手をしたことについて何かを言うつもりはない。肩慣らしには丁度いいだろう。
「まさか人に頼んでおきながら疲れたなんて言うんじゃねぇだろうな」
飛ぶのが楽しみだと喜んでいたのはどこの誰だ。早く練習がしたいとうるさかったから時間を作ってやったというのに。
湧き上がる怒りにギリッと奥歯を噛み締める。もういっそうのこと戻ってしまおうか。今日はエレンの実験も予定している。リヴァイの監視下でなければ、ハンジは動くことが出来ない。
ここでカイを待ち続けるより、戻ってハンジに付き合った方がいいのではないか。
「チッ……無駄な時間を使ったな」
静かな森の中でリヴァイの舌打ちだけが響く。
今すぐ戻ってしまおうか、それとももう少し待つべきか。
暫し考え、戻ることを決めた刹那、頭上から立体機動の音が聞こえて顔を上げた。
『見つけた』
「……いつまで待たせる気だてめえ」
『ごめん。ちょっと飛ぶの楽しくて』
リヴァイの居る位置よりも数メートル上をカイは飛んでいる。あの高さを飛べるのはカイくらいだ。
「感覚は戻ったようだな」
『おかげさまで。隠れんぼは終わりだな。リヴァイ、鬼ごっこを始めようか』
ガス噴射の音が消えるのと同時にカイがリヴァイの方へと降りてくる。その姿は飛び疲れた鳥が枝に休みに来たようだ。
カイがリヴァイの横に足をつく。重力を感じさせない軽やかな動き。
『早く逃げないと捕まえるぞ?』
「ふん、出来るものならやってみろ」
カイの手が自分に触れる前にその場を飛び立つ。
練習はここからが本番だ。
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