第十四幕
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ぐったりとしているペトラとオルオにエルドが水を渡しているのを眺めながら、カイはガス缶の交換を終えた。
「は、早かった……なんなの?何が起きたの?」
「俺が……新人に負けただと……?」
「何したんだお前は」
へたりこんでいる二人を見たリヴァイは呆れた様子。
『鬼ごっこしてきただけなんだけどな』
「鬼ごっこって……立体機動を使ってってことか?」
『うん。練習に丁度いいと思って』
口元を引き攣らせるエルドにカイは緩やかな笑みを浮かべた。
「クラウン、お前は一体何者なんだ?」
『ただの元憲兵だけど……』
「ふざけないでくれ。あいつらは精鋭なんだぞ?あの二人をあんなふうにするなんて……」
素直に答えたのにエルドからじとりと睨まれる。それどころか彼は刃を構えようとしていた。慌てて両手を上げ、敵意がないことを示す。
『待て待て待て!本当にただの憲兵だったんだって。そんな特筆することもないし、リヴァイみたいに肩書きがあるわけじゃない』
「エルド、こいつは"鳥"だ」
「え……こいつが、ですか?」
リヴァイの言葉にエルドは呆気に取られる。
『え、なに鳥って。俺、人間だけど』
「お前は気にしなくていい。ただの通り名だ」
『ちょっと待て。本人が知らないところで変な名前付けてんのかよ』
知らない間にリヴァイみたいな二つ名が作られている。しかもリヴァイの人類最強と違って、なんだか含みのある呼び名だ。
「そんな……待ってください。こいつがあの"鳥"なんですか?有り得ません」
「事実だ。カイ、あとはてめぇが説明しろ」
『説明しろもなにも鳥なんて呼び名知らないんだけど……』
話を振るだけ振ったリヴァイはそそくさと森の方へと歩き出す。
「早くしろ。お前の練習が終わり次第、エレンの実験だ」
『今日やるのか?』
「あいつに我慢という言葉はないだろうが」
『あー、確かに?』
それならば早く練習を終わらせなくては。その前にエルドに説明しなくてはならないのだが、なんて言えばいいものか。
『悪い。その鳥っていう名前の方は知らないんだわ。人違い、と言いたいところだけど、リヴァイが言ったってことはそうなんだろうけど……』
「"鳥"は調査兵団で憧れの存在であり、希望だ」
『憧れ?』
なんだか嫌な予感してならない。自分の話ではないと思いたい。
「直接見たことは無いが、その者は鳥のように空を自由に飛びまわって巨人を倒していくらしい。我々が背負っている自由の翼がとても似合う飛び方だと」
『あ、それ俺じゃないわ』
リヴァイが誰かと勘違いするなど珍しいこともあるものだ。
「だから言ってるんだ。兵長は誰かと勘違いしていると」
『つか、リヴァイが鳥なんじゃないか?要は立体機動の使い方に長けてるってことだろ?そんなのリヴァイしかいねぇじゃん』
すばしっこさも兵士の中で群を抜いている。小柄で機動力が高いというのもあるが、常に冷静な判断をするから無駄がない。
リヴァイの動きは見とれてしまうほど綺麗なのだ。
「おい、いつまで喋ってるつもりだ」
『あ、やべ。俺行ってくるわ』
「あ、ああ……」
使いかけのガス缶をエルドに渡してリヴァイの方へと歩み寄る。
「ちゃんと言ったのか」
『リヴァイさ、誰かと勘違いしてないか?』
「は?」
『俺の飛び方が鳥なわけないだろ』
「そう思ってるのはお前だけだ」
『いやいや、ないって。鳥が似合うのはリヴァイの方だと思うよ。俺はお前の飛び方好きだから』
素直に感想を述べただけなのに何故かリヴァイから睨まれる。
「カイ」
『なんだよ』
「いや、なんでもない」
『なんでもないって顔してねぇよな?なんで俺そんな睨まれてんの!?』
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