第十四幕
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「ペトラたちはどうした」
「兵長!それがどこにも居ないんですよ。馬だけがここにいたんです」
「チッ……あいつらは一体何をしてやがる」
今日はカイの立体機動の練習を行う予定だった。
いつもの掃除を終えてからリヴァイはエレンを連れ、先に行かせていたエルドとグンタらに合流したところ。それなのに当の本人であるカイとエルドたちより先に行ったペトラとオルオの姿がどこにもない。
「アデライン、てめえの主人はどこに行きやがった」
オルオとペトラの馬をじっと見つめていたアデラインに声をかける。主人であるカイとは真逆の瞳。人のことを敵だと思っているような目で見られ、リヴァイも自然と目が細くなる。
「あれ、この馬って確かリヴァイ兵長が連れてきた馬ですよね」
「ああ。こいつはカイの馬だ」
「カイのですか?」
「そうだ。だが気をつけた方がいい。こいつは主人とは違って攻撃的だ。少しでも近づけば──」
「えっ」
「蹴られるぞ」
アデラインを撫でようと手を伸ばしたエレンは遥か後方へと吹き飛ぶ。呆気に取られているエルドとグンタを横目にリヴァイは再度アデラインにカイの行方を問う。
「あいつらはどこに行った」
じっとリヴァイを見たかと思えば、アデラインは前方の森の方へ顔を向ける。
「立体機動の練習をしているのか」
馬を置いていった時点でなんとなく予想はついていた。立体機動の練習がしたくてうずうずしていたカイのことだから、ペトラとオルオを誘って中へ入ったのだろう。
「勝手なことをしやがって。エルド、替えのガス缶を城から持ってこい」
「了解です」
「随分と舐められたもんだな」
オルオとペトラの相手をしたあとに自分と飛ぶつもりなのか。どれだけ消費してくるかは分からないが、使いかけのガス缶なんかで飛ばれてこちらが満足すると思っているのか。
「加減してやろうかと思ったが、その必要は無さそうだな」
久しぶりに本気で飛べそうだ。そもそもカイ相手に加減をしようとしていたのが間違いだった。
「な、なんなんですかその馬」
「戻ってくるのが遅え。忠告はしただろうが」
「もっと早く言ってください……」
やっと戻ってきたエレンは痛そうに腹をさすっている。普通の人間であれば骨が何本か折れている。流石は巨人といったところか。
「蹴られたくなければ近づくな」
「リヴァイ兵長は大丈夫なんですか?」
「こいつの面倒を見ていたのは俺だからな」
「え゙」
調査兵団を抜ける際にカイはアデラインをリヴァイに預けていった。大切な相棒だからリヴァイに世話をしてもらいたいと言って。
カイの言うことしか聞かない馬の相手などどうしろと、と思っていたが、その心配は無用だった。アデラインはリヴァイの言うことをちゃんと聞いて馬小屋で大人しく主人の帰りを待ち続けていた。
ただ、問題だったのはリヴァイの言うことしか聞かなかったというところだ。
「そいつに近づこうとしたやつは全員医者送りになってる」
「そんな凶暴な馬にカイは乗ってるんですか……」
「こいつがカイを選んだんだ」
「選んだ?馬がですか?」
「ああ」
調査兵団の暴れ馬で有名だったアデライン。これまで何人もの人間が飼い慣らそうと手を尽くしたが、誰もがアデラインの後ろ足の餌食となった。
人を乗せられないなら荷車を運ばせる用にすればいいと繋げたがそれも出来ず、最終的に殺処分が検討された。
そんな中、まだ新兵だったカイがアデラインを手懐けた。周囲の人間らがどうやったんだとしつこく聞いていたが、カイは困ったように笑うだけ。
アデラインに力技は通用しない。無理矢理乗りこなそうとすれば死に直結する。そんな馬がカイを背中に乗せた。
「お前も似たようなもんだろう」
「俺がですか?俺はこんな暴れ馬じゃないですよ」
どうだか。自分の命運がかかっている場であれだけの事を言ってのけるようなやつが大人しいとは思えない。
「アデライン、良かったな。お前仲間ができたぞ」
「リヴァイ兵長!俺はこいつと同等なんですか!?」
「騒ぐな。やかましい」
「兵長!カイたちが戻って……え?」
森の中から出てきた人影を見てグンタが叫ぶ。
『あ、悪い。リヴァイたち来てたのか』
へらりと笑っているカイの脇にはペトラが抱えられ、もう片方の手はオルオの首根っこを掴んでズルズルと引きずっていた。
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