第二幕
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「おい……おい!どうしたんだアルミン!しっかりしろよ!おい!」
身体を揺さぶられて落ちていた意識が徐々に浮上する。目の前でコニーが必死な表情で自分を見ていた。
「あっ」
「目ぇ覚めたか?大丈夫か?ケガはねえのか?お前の班は?」
「班?」
コニーの言っていることが理解できず、アルミンは呆けた顔で呟く。そんな姿にコニーは呆れたようにため息をついた。
「おいおい、しっかりしろよ。なんで一人だけなんだよ。なんかお前の身体ぬめっとしてるしよ。一体何があったんだよ?」
呆然とコニーを見つめていたとき、今までの記憶が走馬灯のように駆け巡る。何故ここにいるのか。何故自分だけが生きているのかを。
「うああああああ!この役立たず!死んじまえ!」
「おい、落ち着けアルミン!みんなは!?」
"みんなは?"と問われてアルミンは正気を取り戻す。その問いに対する答えを持っているのは自分しかいない。でも、口にすることも出来ない。
そんな状態のアルミンに助け舟を出すように他の人間が代弁してくれた。
「もういいだろうコニー。全滅したんだよ、こいつ以外は」
「うるせえな!アルミンは何も言ってねえだろ」
「周りを見りゃ分かんだろ!これ以上そいつに構ってる時間はねえんだ」
「なんでアルミンだけ無事なんだ」
コニーの言葉に頭を抱える。自分だけが無事な理由は助けられたからだ。大切な友人が命を懸けて助けてくれたから。自分なんかの為に彼は。
「さあな。死体だと思ったんじゃねえの?複数の巨人に遭遇したのは気の毒だが、劣等生のこいつだけが助かるとはエレンたちも報われないな」
「なあクソ女、二度と喋れねえようにしてやろうか!」
「やめて二人とも!みんな気が動転してるんだよ。急にたくさん友達が死んでいくんだもん、仕方ないよ!」
コニーの前に現れたクリスタが仲裁に入るように声をあげる。
口喧嘩が終わり、コニーはアルミンに手を差し出す。その手を見て、また泣き出したくなるのをグッと堪えた。
どれだけ泣いて叫んでももう戻ってこない。今は生き残ることを考えなければ。
「ごめん、迷惑かけた。後衛と合流する」
「お、おい、アルミン!」
コニーの声を遮るようにアルミンは屋根から飛んだ。今は一人になりたい。これ以上誰かの側にいて惨めな思いはしたくなかった。
今まで助けてくれた友人を見殺しにしてしまった。あの時、動いていたら。もっと早く手を伸ばしていたならば。
エレンを救えたのに。
壁に向けてアンカーを飛ばすも、位置が悪かったのかアンカーが刺さらず弾かれる。体勢を直そうにも考え事をしていたせいでアンカーを刺し直せず、そのまま地面へと落ちた。
「うっ……」
痛みと悔しさでまた涙が溢れる。これではいけないと思っているのに。
「僕は……僕はっ!」
『おーい!そこの君!』
人の声と立体機動装置の音が聞こえ、ハッと顔を上げる。声のした方を振り返ると、そこには見知らぬ男の姿。
『大丈夫か?』
「あ、えっと……」
『よく今まで生き延びたな。お前訓練兵だろ?』
座り込んでいるアルミンの横に膝をつき、彼はにこりと笑う。
「貴方は……憲兵団の人……?」
着ている上着には盾とユニコーンの紋章が刻まれている。憲兵団は住民の避難にあたっているはずなのになぜこんな所にいるんだ。
『今はだけどな。明日になったらどうなってることやら……って、そんなことはどうでもいいんだよ。それより君は?怪我したのか?』
「い、いえ……してません」
『そ。じゃあ動けるな?立体機動は?壊れてないか?』
「大丈夫です」
動けるなら戦え。そう言われると思って身構える。巨人がすぐそこを闊歩しているのだ。当たり前の言葉である。
『よし。ならまずはここから動くぞ。周りに巨人がウヨウヨしてるから。身の安全の確保だ』
「えっ……ぼ、僕たちは巨人の討伐を」
『何言ってんだよ。これだけの数が中に入ってきてる。そんなんで巨人の討伐なんかやってられるか。壁に穴が開いてる以上、やつらは際限なく入ってくる。そんなの相手してたらガスも刃も足りなくなるだろ』
だから撤退する。そう言って彼はアルミンの腕を取った。
.