第十三幕
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『そりゃそうだよなぁ。変な時間に寝れば、変な時間に起きるよなぁ』
夕飯を食べたあと、本の続きを読んでからベッドに入った。だが、今日は長い昼寝をとってしまったせいで中々寝付けず、やっと寝れたかと思ったらすぐに起きてしまった。
布団の中でゴロゴロしていても眠気は来ない。これなら素直に起きて調査資料に目を通していた方がいいかもしれない。
『とりあえず水飲むか』
むくっと起き、ドアノブに手をかけたところで静止。古い建物のせいで、金具が錆び付いている。皆が寝静まっている中、この嫌な音を聞かせるのは可哀想だ。
『ゆっくり開ければ大丈夫か?』
一気に開け放たないで、徐々に扉を開けていく。それでも軋む音が廊下に響いてしまい、カイは苦々しい顔を浮かべた。
階段を降りようとしたとき、階下から話し声が聞こえてきた。まだ誰か起きているらしい。
「それでね、今回捕らえた巨人に名前を付けたんだ。七メートル級はビーン、四メートル級がソニーだ。名前の由来はとある一族の者たちから取った」
「は、はい……それさっきも……」
どうやらハンジがここに来ていたらしい。大方、リヴァイに実験の許可を取りに来たのだろう。そういう所は仕事の早い人物だ。
ハンジの声だけが聞こえるということは皆早々に退散したのか。エレンの返事にも疲れが感じられる。長いことハンジの実験話に付き合わされている証拠。
『良かったなエレン。助けてもらえるぞ』
このまま付き合わせてたら朝を迎える。実験を控えているというのなら休ませるべきだ。研究材料を疲労させるなんて普通は考えられないのだが、ハンジは如何なる状態であっても巨人の調査だと言って強行しそうで怖い。巨人は疲れを感じるのか、とか言って。
『ハンジ、その辺にしてやれ。エレンの頭がゆらゆらしてる』
「やあ、カイ!早いお目覚めだね」
『眠れないから水飲みにきたんだよ。そしたら話し声……というか、ハンジの声が聞こえたから』
テーブルに置かれたままのカップを見る限り、リヴァイたちはそそくさと出ていったみたいだ。エレンを置いていくとは何事だと言いたい。監視という名目でリヴァイ班にエレンを入れたんじゃないのか。こんなガバガバな拘束でいいんだろうか。
『エレン、部屋……と言えんのかあれは。えっとベッドまで連れてってやるから』
頭をゆらゆらさせているエレンに声を掛けるも、片足を夢の中に突っ込んでしまっているのか反応が薄い。もはや自分の足で歩いて地下室までは行けなさそうだ。
『しょうがないな』
「エレン寝ちゃった?残念だなぁ、これからソニーとビーンの実験で得たことを元に私の考察を聞いてもらいたかったのに」
『もう寝かせてやれよ。代わりに俺が聞くから』
「え!?カイが聞いてくれるのかい!?」
『この間聞けずじまいだったからな』
巨人に関する新たな情報は期待出来なさそうではある。でも、カイが抜けていた三年間について話を聞くことは出来るはず。
『水持ってくるからちょっと待ってて』
「うんうん!待つよ。いくらでも待つよ!」
話を聞いてくれると言われたハンジは嬉々として目を輝かせる。巨人の話となるとハンジはいつもこうなるのだ。きっとエレンに誤解されたに違いない。自分も最初はそう思ったから。
『エレンに何も言われなかったのか?』
「言われたよ。なんで巨人を前にして陽気でいられるんだって」
『なんて、答えたんだ?』
「カイの時と同じさ。私は私の視点で巨人を見るってね」
『そ、』
どれだけ年月が経とうと変わらない。ハンジなりの巨人に対しての姿勢。不気味に思うところもあるけれど、これはハンジにしか出来ないこと。恨みも興味も持ち合わせているハンジにしか。
『さて、話を聞こうか』
寝落ちてしまったエレンを膝の上に乗せる。肩に寄りかからせるようにして抱いてやると、エレンは穏やかな寝息をたてはじめた。
「随分と手馴れてるね」
『こいつがもっと小さかった時からやってることだからな』
子守りをしていた頃はこうしてよく寝かしつけていた。起きていればやんちゃばかりしていたから無理矢理昼寝をさせていたのだ。そうすれば他所の家の子供と喧嘩なんてさせずに済む。
そういえばよく近所の友達を助けるために喧嘩をしていた気がする。一度だけ見かけたことがあったが、彼は今どうしているのだろうか。元気にやっているといいけれど。
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