第十一幕
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「そうか。では、カイ・クラウンはリヴァイの指示の元、トロスト区防衛のためやむおえず立体機動装置を持ち出したということだな?」
ダリスの言葉にエルヴィンは頷く。
「であれば、カイ・クラウンの罪状は不問とする」
「総統、この場を借りて裁きたい者がいるのですが」
「今回はエレン・イェーガーとカイ・クラウンの審議しか予定していない。それ以外に誰を裁くと言うんだ?」
「カイに関してのことです」
「エルヴィン、カイの罪状は無くなった。これ以上ここに居る必要は無い」
「ダメだ。ハッキリさせる必要がある」
エルヴィンを止めようとリヴァイが声をかけるも、エルヴィンは首を横に振って断る。そして上で傍聴していたミケを見上げて何やら指示していた。
「カイを憲兵に預けるにあたって、ナイル・ドークにとある条件を付けました。もしカイに何かしらの害があった場合、即刻調査兵団に引き戻すというものです」
ガチャリと後方の扉が開けられる。それと共に飛び込んできたのは怒号。
「なんで俺が裁かれなくちゃいけないんだ!やったのは俺だけじゃない!他の奴らだって……!」
入ってきたのは見慣れた顔の男。確か憲兵に入ったカイにあれやこれやと教えてくれたやつだ。
『なんでここに?』
カイの声を聞いたそいつは恨みがましそうに睨んできた。
「元はと言えばこいつが全部悪いんじゃないか!!」
突然向けられた怒りに驚いて身を竦める。何故彼に責められているのか見当もつかない。
「スミス団長、彼は?」
「カイに憲兵の仕事を教えていた者です」
ミケに腕を掴まれながらこちらへとやってくる。その間もずっとカイの事を睨み続けており、まるで獰猛な犬のよう。ミケが手を離したらすぐさまカイに食いついてきそうな勢いだ。
「カイ、何が起きてんだよ」
『さ、さあ……これは俺にも分かんねぇわ』
エレンに聞かれるもカイはそれに見合う答えを持ち合わせていない。自分も状況が全く読めなくて戸惑っているのだから。話はもう終わったんじゃないのか。カイがした違反は不問とされたのだからもう用はないはず。
とりあえずここから逃げ出したい。なんか嫌な予感がする。
「彼はカイが憲兵に居た三年もの間、食事に毒物を盛っていた疑いがあります」
『……は?』
「それはどういうことかね。クラウンに毒を盛っていたという証拠は?」
「彼自身が語るでしょう」
食事、毒、と聞こえてカイの思考は止まる。
『ま、待て……どういうことだ……それ』
「カイ、君の体調不良は精神的問題も少なからずあるが、大部分は憲兵の兵士たちによる嫌がらせだ」
『は……?嫌がらせ?』
エルヴィンの言っていることが理解できない。
「気づいていなかったのか?毎食、殺鼠剤を盛られていたことに」
『さっ、そざい……?』
驚いているのはこっちの方なのに何故かエルヴィンが目を見開いていた。隣にいるリヴァイも顔を顰めている。
「カイ、お前の栄養失調は人為的によるものだ」
頭から冷水をぶっかけられたかのように冷えていく。まさかそんなことをされていたなんて。
「カイ!!」
かくん、と膝から崩れ落ちる。エレンに呼ばれて顔を上げると、必死にもがいているのが見えた。
後ろ手に拘束されているからこのまま倒れるわけにはいかない。でも、身体に力を入れられなくて徐々に傾いていく。
「カイ」
床にぶつかる、というところで誰かに支えられた。そのまま抱えあげられて横抱きにされる。
「エルヴィン、もうコイツは部屋に戻す。いいな」
「ああ、これ以上聞かせるのは酷だな」
「やめろと言ったのに言い出したのはてめぇだろうが」
最後の言葉はエルヴィンの耳に入らなかったのか、ダリスとの話し合いが再開されていた。
『リヴァイ、あれどういう意味』
「部屋に戻ったら話す」
『あっそ。あと、その……下ろしてもらえると助かるんだけど』
横抱きのまま部屋に連れていかれるのはさすがにしんどい。今も色んな奴らにジロジロと見られているのだ。恥ずかしさでどうにかなりそうである。
「歩けねぇだろう」
『歩ける。頑張る』
「わがまま言ってんじゃねぇ」
カイの頼みは聞き入れてもらえず、結局リヴァイに抱えられて部屋へと戻されるのであった。
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