第十一幕
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「異議だと?」
「はい。カイ・クラウンは我々調査兵団の団員です。彼は憲兵団に一時支援兵として貸していたにすぎません」
「それはどういうことだ」
「三年前、ナイル・ドークと相談し、憲兵団の人員不足解消という名目でカイ・クラウンを憲兵団に異動させています」
リヴァイから聞いていた話の通りだ。
カイが調査兵団を抜けたいと言った数日後、エルヴィンはナイル・ドークと話をつけていた。
憲兵団の人員不足は深刻なものだったようで、頭を悩ませていたナイル・ドークにエルヴィンが持ちかけたもの。
カイを支援兵として憲兵に入れることで、治安維持のための武力の底上げや万が一のときに備えて、巨人殺しに特化している兵員の配備という話。
それはすべて建前で、カイの精神が落ち着くまで預かっていて欲しいというのが本来彼らが交わしたものだった。
「憲兵団師団長、この話は事実かな」
「はい。私とスミス団長の間でのものです」
「ふむ。とはいえ、カイ・クラウンは憲兵団の兵士としての従事していた。憲兵の上官命令は従うべきではないか?」
だから例え兵団同士でのやり取りがあったとはいえ、カイの業務違反は免れない。
「カイの本来の上官はリヴァイ兵士長です。彼は憲兵に"貸していた"だけのこと。そして憲兵の業務を行うと共にカイには別の任務を与えていました」
「別の任務とは?」
それはこっちが聞きたい。
憲兵に行く時にそんな話は一切なかった。言わずもがなエルヴィンとは口聞いてなかったし、リヴァイから何かを言われた記憶もない。ハンジにやたらと残念がられたくらいで、憲兵での任務なんて受けた覚えは全くなかった。
どういうことだとリヴァイに視線を送ると、相手もこちらを見ていたらしくカチリと目が合う。
──黙ってろ。
そう言っているように見えた。
「五年前、シガンシナ区の壁が巨人によって破壊されたことにより民が一斉に壁の内側へと退避することになりました。それにより巨人たちも北上してくるだろうと予測し、次に狙われるのはトロスト区だと断定した我々はカイをトロスト区の憲兵兵舎に配属することで、次の巨人襲来に備えたのです」
全くもってそんなことは知らない。出来ることなら今エルヴィンに問い詰めたいくらいだ。そんな昨日今日考えたような言い訳が通用するはずがないと。
「ふむ。彼一人で多くの巨人に対抗出来るというのか?」
「彼はトロスト区陥落後、中衛を担っていた訓練兵を連れて巨人の討伐をしています。それにより104期訓練兵は全滅することなく生きています。そして、彼らを壁の上に避難させたあとも駐屯兵団の兵士たちと行動を共にし壁の穴を塞ぐことに尽力しました」
「ピクシス、カイ・クラウンが駐屯兵団と共に巨人を倒したというのは本当かね」
「ああ、カイには随分と助けられた。巨人との戦闘に不慣れな部下たちのまとめ役を担ってくれたおかげで、わしらの部下の損害は抑えられた。もし彼が居なかったら甚大な被害を被っていたじゃろうな」
確かに駐屯兵団と一緒に巨人は倒した。でも、そんなに動いたか?フラフラしていた巨人を手当り次第倒していただけであって、考えて行動していたわけではない。
ピクシスとエルヴィンがダリスにどれほどカイがトロスト区を守るために仕事をしたかを説明している間、当の本人は話についていけずに立ち尽くしていた。
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