第十一幕
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審議所の前で止められ、後ろ手に手錠を掛けられる。刃物を持っていないか身体確認をされたのち扉が開かれた。
「うん?ああ、来たか」
真正面に座っている男、兵団総統のダリス・ザックレーはカイの姿を視認すると小さく頷く。
「療養中だと聞いていたが、大丈夫かね」
『問題ありません』
こつり、と審議所へと足を踏み込むと何故か血の匂いがした。
ダリスから目を下げた先、中央の柵に囲まれたところに誰かが膝まづいていた。彼の着ている白いシャツには所々血がついているし、その周りの床にも点々と赤が飛び散っている。
彼がエレンだと気づくのにそう時間は掛からなかった。
「カイ……!」
入って左側にミカサとアルミンが立っているのが見える。驚いた顔をする二人に向けて苦笑いを浮かべていたら、後ろから憲兵に小突かれた。
「立ち止まるな。進め」
『口で言えよ。そんなもん突きつけてないで』
「文句を言うな。早く行け!」
『はいはい……まったく、普段仕事しないくせにこういう時だけは立派だな』
これ以上銃で背中をつつかれるのは勘弁願いたい。不慣れな武器を手にしている男の手は震えていて、いつ手元が狂って撃たれるかわかったもんじゃない。
静かな審議所にカイの靴音が響く。憲兵団の方からは鋭い目を向けられ、調査兵団からは懐かしむ目。その中に混ざる気持ち悪い視線もひしひしと感じつつ、カイはダリスの前へと出た。
「あ……な、カイ……?」
『随分と手酷く痛めつけられてるな。誰がやったかは容易に想像つくけど』
ちらりとリヴァイの方を見やれば、さっと視線を逸らされる。
「なんで……なんでカイがっ!?」
「さて、次はカイ・クラウンの処罰についての審議とする。イェーガー君、そのままで申し訳ないが、審議中は私語を慎んでくれ」
「ま、待ってください!カイが何をしたって言うんですか!まさか、俺となにか──」
『エレン・イェーガー』
「はっ……」
ダリスに向かって異議を唱えるエレンにカイは立ち塞がる。
『黙るということが出来ないのか?』
「な、んで……」
『君とはまったく関係の無い理由だ。それだけは伝えておこう』
だから安心するといい。そう呟いてからカイはダリスへと身体を直す。
「うむ。それでは始めよう。カイ・クラウン、上官命令無視及び立体機動装置の無断使用をしたことは間違いないかね」
『はい。間違いありません』
「その事について、憲兵団師団長ナイル・ドークは兵団除籍、農業従事の罰を望んでいる」
重罰というからもっと重い刑に処されるのかと思っていたけどそうでも無いらしい。兵団の除籍は分かりきっていたこと、農業従事はこの食糧難において致しかたないことだ。
『任務放棄は事実ですので、どのような処罰も受けます』
「そうか。ならば──」
「ザックレー総統、カイ・クラウンの処罰について異議を申し立てます」
すっと上げられる手。それはエルヴィンの手だった。
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