第十一幕
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「ちょっと!カイはまだ体調が万全じゃないんだからそんな無理矢理連れていかなくてもいいじゃないか!」
「これは総統の命令ですので」
「それは知ってる!でも、わかるだろう!?」
朝から部屋の外が騒がしいと思っていたらどうやら時間が来たらしい。
『審議所なんて初めて入るな』
ハンジが彼らを引き止めている間に着替えを済ませておこうとベッドから立ち上がる。まだ身体がふらついているが立てないことは無い。テーブルに手をつきながら掛けられていたシャツに腕を通した。
審議所。憲兵に入ってから何度か聞いたことのある場所だったが、自分が入る身になるとは予想もしてなかった。
上官の命令を無視した罪がそんなに重いとは。せいぜい、呼び出されて怒られる程度だと思っていたから審議所で裁かれると聞いたときはぽかんとしてしまった。
『敵前逃亡は死罪ってのは知ってるけど、上官命令無視で重罪だなんてなぁ。立体機動の無断使用も入ってるのか』
立体機動を使おうと考えたときにもう憲兵には戻らないと決めていた。前々から憲兵に対して嫌気を感じていたのもあるし、そもそも自分には合わない兵団だと思い始めたから。
自己保身よりも他者を優先してしまうような人間は憲兵でやっていけるとは思えない。
『そういえばジャンは憲兵志望だって言ってたよな。あの子は……大丈夫かな』
彼は優秀だ。だからこそ憲兵に入って欲しくない。かといって調査兵団に入ってしまったらその儚い命がすぐに失われてしまう。地味な仕事が多いとはいえ、彼には駐屯兵団に入ってもらいたいと思う。いざという時に彼の特性が発揮されるだろうから。
「だからちょっと待ってくれって言ってるじゃないか!」
「そこをどいてください。これ以上邪魔をするのであれば、あなたも軍法会議にかけますよ」
もうすぐそこまで来ている。カイが部屋から出なければハンジはいつまでも彼らを止めようとするだろう。
「ああいいさ!かけられるものならかけてみるといい!私は仲間のためなら軍法会議でも拷問でもなんでも受けるつもりだよ」
『それは困るからやめて欲しいんだけど』
扉を開けて廊下に顔を出すと、目の前には両腕を広げたハンジが立っていた。
「カイ!?なんで出てきたんだ!」
『こいつらは俺を呼びに来たんだろ?それなら行くしかない』
「ダメだ。そんな身体で行かせられるわけないだろう!?もうちょっと待ってくれ。エレンの裁判が終わったらエルヴィンたちが戻ってくるはずだから」
『エレンの裁判?』
数日ぶりに聞く名前に一瞬ピンと来なかったが、トロスト区で起きたことを思い出した瞬間ハッと息を飲んだ。
『ハンジ、なんで教えてくれなかったんだ』
「え?何を?」
『エレンが裁判に掛けられてるってなんで教えてくれなかったんだよ!』
「なんでって……え?君、エレンの事を知ってるのかい?」
『知ってるも何もあいつは……』
そういえばエレンの事はなんて表現すればいいのか。
子供の頃に病気を治してくれた医者の息子。世話になったから恩を返すためにエレンの子守りをしていた。
友人というには義務感が邪魔をするし、知り合いというにはよそよそしい。いざ、エレンとの関係を説明しようとすると戸惑ってしまう。一言で言い表すとしたら。
『……近所のクソガキ?』
「もっとまともな説明はなかったのかい?」
『ねぇよ……本当のことだし』
エレンが裁判に掛けられているというのなら早く審議所にいかなくては。あの性格ではきっと不利になるようなことをしそうだ。
『審議所に行くんだろ。早く連れてけ』
憲兵に背中を押されて審議所へと歩き出す。カイ本人が行くと言っているのにも関わらず、ハンジは引き留めようとしてくるので、仕方なく本当に仕方なく蹴り飛ばしておいた。
廊下にぶっ倒れたハンジを多少ながらも申し訳なく思いつつ、カイは審議所へと急いだ。
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