第十幕
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「眠っちゃったね。あれだけ泣いたら疲れるか」
やっと泣き止んだかと思ったらいつの間にか泣き疲れて眠ったらしく、カイはリヴァイの肩に頭を乗せてすやすやと穏やかな寝息をたてていた。
「で?どうするの?」
「何がだ」
「こんなに泣いてまで戻りたくないと言ってる子を調査兵団に戻すのかって」
「戻す以外に選択肢は無い」
眠っているカイを膝の上に乗せて抱き直す。前に比べて随分と軽くなった。これでは片手で抱えられそうだ。
「それこそカイの精神が壊れると思うけど」
「俺たちが死ぬところを見せなければいいんだろう」
「そりゃそうだけどさ。そんなの無理じゃない?カイも分かってるから距離置いたんでしょ」
「死なねぇ努力をしろ」
「簡単に言うねぇ?」
カイのためなら仕方ないか、とハンジはへらりと笑う。
巨人を前にして両手を広げ、愛おしそうに呼びかける余裕があるなら出来るはずだ。これまで生き抜いてきたのだから問題は無い。
「さて、これは説得出来たに入るのかしら?」
「さあな。これで戻らねぇと言い張るなら蹴り飛ばす」
「優しくしてあげなよ。リヴァイが一番心配してたんでしょ?」
「そんなに心配はしていない。言うほどこいつは弱くはないからな」
打ちひしがれてただ閉じこもっているだけの人間では無い。己が出来る最大限の努力はする。例えそれが良い結果でなかったとしても、カイは動くはずだ。考えるよりも先に身体が動いてしまうようなタイプだから。
「そう言いつつ何かあれば憲兵に行ってた癖に。今日だって行ってきたんじゃないのかい?」
何があったんだと聞かれ、リヴァイはカイが眠っているのを確認してから口にする。
「今なんて?」
「こいつの飯に毒が盛られてた。大方、調査兵団から来たネズミとでも思われたんだろう。毎食、微量の殺鼠剤を入れて様子を伺っていたらしい」
「そいつ今どこにいんの」
「エルヴィンが身柄を確保してる。カイの審議が始まり次第そいつを証人として突き出す」
「じゃあやり返せない、か」
「終われば不要になる」
生きて帰すつもりはさらさらない。下手をすればカイは死んでいたのだから。それ相応の罰を受けるべきだ。
「どうしてやろうか。ちょっと痛めつけたくらいじゃ許せないね」
そう呟いたハンジは拳を固く握りしめるながらカイを優しい目で見ていた。
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