第十幕
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「あんたら何やってんのよ……」
『あ、』
「あ?」
「あ、じゃないわ!なにやってんのって聞いてんの!扉も鍵かかってて開かないし、やっと開いたと思ったらカイがリヴァイ押し倒してるし!」
『押し倒しては……いや、してるか。殴り倒したの間違いだけども』
突然扉がぶち破られたかと思えば、ハンジが喚き散らしながらリヴァイとカイを交互に指差す。
「あんたさっき起きたばかりでしょうが!!」
『なんでこんな文句言われんの……しかも俺だけ……』
「あなたにも言ってるんだからね?リヴァイ」
「殴られた身の人間がなんでキレられなきゃなんねぇんだ」
「殴られるようなことをしたってことでしょうが」
ふんぞり返るハンジに早く布団に戻せと急かされ、リヴァイは小さく嘆息。カイに戻れと声を掛けたが、いつまで経ってもベッドへと戻らない。
「なにやってんだてめえは」
『……悪い。その……』
「早く戻れ。俺は床で寝る趣味は無い」
『俺もお前を押し倒す趣味は無い。無いんだけど……』
ベッドからリヴァイに殴りかかってきたのでカイは今変な体勢をとっている。足はベッドにあるのに上半身は床。まるで負荷を掛けた腕立て伏せのような状態。
なんとかベッドに戻ろうとしているようだが、腕がピクピク動くだけでその場から1ミリも動いていない。
「おい……まさか戻れねぇわけじゃないだろうな」
『悪かったな!!力が入らないんだよ!』
「目の前で叫ぶな。耳が痛い」
『うるせぇな!!だったら少しは手伝っ──あっ』
文句を言うのに夢中になったせいか、カクンッと腕から力が抜けてカイはリヴァイの胸の上にボスッと落ちる。なんとも無様な格好となったカイは恥ずかしさで顔を上げられないのかそのまま固まった。
「お前いい加減にしろよ」
『もう何も言うまい……』
「まったく何やってんのよ。ほら、手貸して上げるから」
こつ、とハンジがこちらへと近づく音が聞こえ、瞬時にリヴァイはカイを抱えて起き上がる。横抱きにしてからベッドへと下ろすと、ハンジはキョトンとした顔をしてから呆れた表情を浮かべた。
「リヴァイ……」
「水は持ってきたのか」
「ええ、ええ。持ってきましたとも。ああ、それと医者から栄養剤も飲むようにって言われたよ」
サイドテーブルに水差しといくつかの薬が置かれる。
「食事がとれないなら暫くはこれで栄養をとってくれって。でも、これに頼ってばかりじゃダメだから、少しずつ食事をとれるようにしていかないと」
『それ飲まなきゃダメか』
「ダメだよ。じゃないと体調は戻らないからね」
差し出される錠剤を見てカイは顔をひきつらせる。その顔からは恐れの念も見え、ハンジは不思議そうに水と錠剤を眺めた。
「栄養剤だから身構えなくても大丈夫だよ。味の保証は出来ないけどね」
『味が気になるわけじゃないけど……』
恐る恐る錠剤とコップを手に取る。手のひらに転がる小粒の栄養剤を見つめたままで飲む気配は見られない。
躊躇うカイの手から錠剤を一つ奪うように取り、リヴァイはそれを口に含んで飲み込む。
「ちょ……なにやってんのよリヴァイ!!」
「一時間待て」
「はあ!?」
「問題がなければ飲め」
「問題って……あるわけないでしょうが!」
そういえばハンジには何も話していなかった。カイの体調不良の原因が食事に混ぜられていた毒によるものだと。
口に何かを入れるのを躊躇うのはそれが原因になっているかもしれないと言うのを忘れていた。
「後で話す。それよりカイ、さっきの続きだ。調査兵団に戻りたくない理由を言え」
喚くハンジを黙らせ、再度疑問を投げかける。このまま逃げ仰せると思っていたのか、カイは安堵の表情から一変、この世の終わりのような顔をした。
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