第一幕
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クッキーの袋をポケットに入れ、巡回の続きをしようと路地裏を出る。
『いつになったら忘れられるのやら』
忘れようとしても脳裏に焼き付いてしまったのか頭から離れることは無い。もしかしたら死ぬまでこの記憶から逃れることは出来ないだろう。
何度も何度も見続けていたものなのに。調査兵団にいた時はこんなことはなかった。憲兵に異動してから体調が悪くなり、よく吐くようになった。
離れた途端、牙を向いてくるのはなんの嫌がらせだ。
うんざりとした気分の中、町中を眺める。
人々は巨人の恐怖など知らぬような顔で生活している。その方が幸せなのかもしれないが、カイからしたらなんとも言えない。
今もどこかでかつての仲間は巨人を相手にしている。この平和を無駄に過ごすことがどれだけ罪作りなことなのかと思ってしまう。
『元気にやってるかな。もう随分と会ってないけど』
調査兵団時代、よく話していた奴がいた。
一人は無駄にテンションが高く、巨人のこととなると見境なくなるやつ。もう一人は人類最強と呼ばれている。その二人とは暇さえあれば話をしていた。
もう一人知り合いがいるけれど、そいつの事はあまり好きではない。じっとりと見てくるあの目がとても気持ち悪く、話しかけて来ようものならいつも逃げていた。
あの頃を思い出すとつい口元が緩んでしまう。
『あいつのことだから死ぬことはなさそうだな。噂だけはまわってくるし』
人類最強ともなれば、いくらでも話が回ってくる。その話が途切れた時、彼が死んだことを意味する。だから今はまだ大丈夫なのだろう。
『今日も何事もなく終わればいいけれど』
いつものように町をまわって帰ろう。
ポケットにあるクッキーをどうしようかと考える。食べたとしても確実にまた吐き出してしまうだろう。それなら誰かに食べてもらった方がいい。子供にあげたらサラの耳に入るから兵士らに渡せばいいか。
町の中心へと歩いていくと、人々が壁の方を見ているのに気づいた。
『どうしたんだ?』
「あ、あんた憲兵か……!あれ……あれを見ろよ!」
男が指差す方へと目を向ける。
『嘘だろ……』
視線の先には壁の高さをゆうに越えている巨人。そいつが壁の上に設置してある固定砲を壊すのをカイは呆然と眺めた。
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