第九幕
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「そうか。事情はわかった。彼は大事な証人だ。必要になる時まで生かしておくとしよう」
男をエルヴィンの所へと連れていくと、目を見開いて驚かれた。グッタリとしている男に何度か声をかけ、生きているのを確認すると部下に手当てをするようにと指示を出す。
「ここまでどれだけ蹴ったんだ。あれでは話せるような状態じゃないだろう」
「当然の報いだ。カイが受けた苦しみに比べれば安いもんだろう」
「それはそうだが……」
「そんなことより向こうはなんて言ってきてるんだ」
「要求は変わらない。即刻、カイを憲兵に引き渡せと」
カイの身柄は調査兵団にある。本来は憲兵に話を通すべきなのだが、リヴァイの独断で連れてきた。そうしなければカイの身が危ないと判断したからだ。
「まさか引き渡すつもりじゃねぇだろうな」
「そんなことをすると思うのか?あの状態のカイを憲兵に渡せるわけがない。それに約束は違えられた。カイは返してもらおう」
カイを憲兵へ渡す条件としてエルヴィンがナイル・ドークと交わした約束。その場にリヴァイも居たので知っている。
"カイの心身に影響するような事が起きた場合、即刻憲兵から調査兵団へと返還する"
それがカイを憲兵に貸す条件だった。
本人には話していないが。
「アイツにはどう説明するんだ」
「私から話をしよう。騙したのかと言われるかもしれないが」
「それなら俺が伝える」
「リヴァイが?」
「ああ。提案したのは俺だからな」
カイを調査兵団から一時離脱させたほうがいいと提案したのはリヴァイだ。
少しずつ壊れていく姿を見ていることが出来なかった。このままでは完全に壊れる。その前にどこか安全なところへ行かせなければと思ってカイを調査兵団から外した。
いつでも戻ってこられるように完全な除籍とせず、他兵団の支援兵士として貸し出して。
「そうか。リヴァイが話してくれるのなら助かる。カイは私と会話するのを嫌がるからね」
「少しは嫌われない努力をしろ」
「これでも頑張っている方だよ。何が原因なのか見当もつかないんだ」
「(こいつ無自覚でやってんのか)」
カイがエルヴィンを嫌っている理由。それはリヴァイもハンジも知っていること。
もしかしたら自分たちだけでなく、他の兵士たちも察している恐れもある。
「カイと話をする時は目をそらせ」
「目を?」
「ああ」
意味のわかっていないエルヴィンは不思議そうに首を傾げる。
「何故目をそらす必要があるんだ?」
「お前が……」
「私がなんだ?」
言うべきか否か。ここで自覚させたら後々面倒なことになりそうな気がする。色んな意味で気づかせてしまうかもしれない。
「話しながらガン飛ばされたら誰だって嫌だろうが」
「そんなに見ていた気はなかったんだがな」
ふむ、と考え込むエルヴィンにリヴァイはそっとため息を零した。
カイを見る度にいやらしい目付きをしている。だなんて言ったらエルヴィンはなんて言うのか。きっと本人は自覚していない。こいつは無意識にカイのことを見ている。
「(教えてやる義理は俺には無い)」
気づかないならそれでいい。一生そのままでいて欲しい。そうすればカイは誰の手にも入らないで済む。
「ああ、言いそびれていた。カイが先程目を覚ましたらしい」
「それをもっと早く言え」
エルヴィンの言葉にイラッとしながらリヴァイは部屋を出た。
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