第九幕
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「さっきの話はどういうことだ」
「そ、それは……」
兵舎の外へと連れ出した男を蹴り飛ばす。地面を這いずる男を睨みつけて詳細を聞き出した。
「クラウンに毒を盛ったんだ……」
「毒だと?」
「ああ、アイツの食事に」
「なんの毒だ」
「分かんねぇよ……確かネズミ駆除に使う薬だとかなんとかって」
「殺鼠剤か」
カイが栄養失調になった理由がわかった。食事に殺鼠剤が混ぜられていたのなら嘔吐を繰り返すはずだ。
だが、殺鼠剤は蓄積することで効果を発揮する薬。一度や二度入れられたくらいでは人体にはそんなに影響は出ない。
「お前らカイに毒を混ぜたのはいつからだ」
「……てから」
「はっきり言え」
「アイツがここに来てからだよ!」
「……なんだと?」
「そ、そんなに怒ることか!?調査兵団でもお荷物だったんだろ!?だから憲兵に押し付けたんじゃないのか!?うちだってそんな奴を相手してる暇なんてねぇんだよ!」
どうにでもなれ、とでもいうように兵士はカイが来た時のことを叫び散らす。
「追い出されたくせしてヘラヘラしてるのが気に食わなかったんだよ!兵士なら仕事するのが当たり前だって毎日巡回になんて行きやがって!俺たちはそんな事をするために憲兵なったんじゃねぇ、俺たちは──」
「内地の安全な場所で閉じこもって生きたいってことか」
「そう思って何が悪い!!お前らと違って巨人を倒そうなんて思ってねぇんだよ!!そんな死に急ぐようなことはしたくねぇ!」
こんなヤツらの思惑で毒を盛られたカイがあまりにも哀れすぎる。
そしてどこに行っても真面目に仕事をしている彼を誇らしくも思った。
「(外に出さないで手元に置いておくべきだったか)」
その方が安全だったかもしれない。巨人と対面するようなことを避ければ、カイのトラウマを刺激することなく過ごせたはずだ。
調査兵団を抜けたとしても、目の届くところに置いておけば。こうはならなかった。
「言いたいことはそれだけか」
「お前らに何が分かるって言うんだ!お前らみたいな狂人どもに俺らの気持ちなんて……!」
「それをアイツに言わなかっただけは褒めてやる」
喚き散らす男を黙らせようと頭を蹴り飛ばすと、気絶してピクリとも動かなくなった。文句だけは達者なやつだ。
だらしない顔で伸びている男の髪を掴んで引きずる。
この男には証言者として公の場で立たせる必要がある。このまま逃がしたら貴重な証人を失ってしまう。
「表に出るまでは大人しくしてろ」
また騒ぐようであれば蹴り飛ばせばいい。この男はそれだけの事をしたのだから。
むしろ蹴られるだけで済ませられていることに感謝してほしいくらいだ。
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