第九幕
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「おや、もう帰ってきたのかい?」
「許可が下りたと言っても僅かな時間だったからな」
地下牢から出てきたリヴァイたちはその足で近くの兵舎へと訪れた。
清潔な部屋に置かれている簡素なベッド。そこには暫く見ていなかった仲間の一人が横になっている。
「医者によると栄養失調だそうだよ。どうやら普段から嘔吐してたみたいで、喉が酷い炎症を起こしてるって」
リヴァイとエルヴィンがエレンに会っていた間にハンジに任せていたのだが、どうやらその間に医者が診に来たらしい。
ベッドの横に置いてあった椅子に腰掛けながらリヴァイは眠っているカイを眺める。
「栄養失調だと?」
「うん。おかしいよね。食料が足りてないのかと思って食料庫見てきたけど、何も問題は無かったんだ。五年前であれば、栄養失調で倒れる人間はわんさかいたけど、今は安定してきているからおかしいって。医者も首を捻ってた」
「どういう意味だ」
「多分、精神的な問題なんだと思う」
カイに布団を掛け直しながらハンジは重いため息を吐く。
「やっぱ憲兵に行かせるべきじゃなかったよエルヴィン」
ハンジの言葉にエルヴィンは俯いて黙り込む。分かっていたことだが、こうして改めて言葉にされると堪えるものがあるだろう。
「ねぇ、リヴァイ。あんたが裏で憲兵をボコしてた時に兵士から何も聞かなかった?」
「聞いてない」
「そう……」
いつだったか、カイが憲兵に嫌がらせを受けていると耳に入り、リヴァイはすぐさま憲兵の兵舎へと向かった。
行われていた嫌がらせは悪質なもので、上官にバレないようにコソコソとやられていた。些細なものから、下手すればカイの首が飛ぶ恐れのあるものまで。上手く立ち回っていたのか、それほど大きな事態にはならなかったようで、上官から注意を受けるだけで済んでいた。
それでも、ことある事に元調査兵団ということを取り上げられては侮辱され嘲笑われていたという。カイは大して気にしていない素振りを見せていたようだが、精神的に疲弊していたのだろう。
嫌がらせをしていた憲兵を呼び出しては、リヴァイは何度も制裁をしていた。そうして少しずつカイに危害を加えようとしている者が減ってきた頃、壁外調査やウォール・マリア奪還作戦などに追われるようになり、カイの身辺調査が疎かになってしまった。
その矢先がこれだ。
「まだ懲りずにコイツに手を出してるのか」
嫌という程教えたつもりだったがまだ足りなかったようだ。カイに手を出せば黙っていないと、やったこと以上の報復をすると言ったのにも関わらず、彼らはカイに嫌がらせをし続けたのか。
「エルヴィン」
「どうした?」
「憲兵に行ってくる」
「それは構わないが。ああ、それならリヴァイ。"証言"を捕まえてきてくれ。そうすればこの後の話が滞りなく済ませられる」
「了解だ」
静かに椅子から立ち上がってリヴァイは部屋を出る。
「何度言えば気が済むんだ。クソ野郎ども」
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