第八幕
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「ミカサ!カイさん!」
『おー、お疲れアルミン』
「アルミン!」
ぺこりと頭を下げるアルミンの頭をわしゃりと撫でて出迎える。
「エレンが勝ったんです!今、自分の責任を果たそうとしているんです!」
『あそこからよく立ち直らせたな』
「声をかけ続けたんです。きっと聞こえてると思って」
その声にエレンは応えたということだ。アルミンとエレンの絆があったからこそ出来たことだろう。
「あとはエレンを扉まで援護すれば僕らの勝ちです!」
アルミンの言葉にイアンが反応し、周りの兵士にエレンを何としてでも守りきれと声を張り上げた。
「クラウン!あの二人と共にエレンの援護をしてくれ!」
『了解。といっても、ガスがそんなに無いから飛び回るのはキツイぞ』
「それなら……」
自分のガスを取り出そうとするイアンに目を見開く。慌ててその手を止めさせ、カイは笑いながら言った。
『無駄に飛び回らなきゃいい話だっての。これはお前が持っておけ』
「だが!」
『だがもクソもあるか!もう少しで作戦を終わらせることが出来る。穴を塞ぐまでの辛抱だ。エレンを死ぬ気で守れって言うのはわかるけど、死にに行けと言ってるわけじゃない!』
「しかし、お前が飛べなくなってはあの者達が」
『守りきれば問題ないんだろ?』
ミカサとアルミン。そしてエレンを守り切ればいい。それならお安い御用だ。
『ガスの心配をするのは壁に登る時だ。その時になったら考えてくれ』
「わかった」
『よし。じゃあ、ちょっくら行ってくる』
先に行ったミカサたちを追うべく屋根の上を走る。これから増えるであろう巨人たちを倒すために少しでもガスを温存しておきたい。
『やっぱり三年のブランクはでかいなぁ。ガスの使い方が下手になってる』
十体以上の巨人を倒していたとはいえ、ガスの扱いが雑になってしまっている。久しぶりに飛ぶのが楽しくてフラフラしていたなんてバレたら怒られそうだ。
『穴が塞がれたらそれも帳消し。バレなきゃいいんだバレなきゃ』
下を走り回る兵士たちに混じるためにカイも屋根を降りようとしたとき、ぐにゃりと視界が歪んで足が止まる。
『気持ち……悪……』
立っているのもしんどくてその場に膝をつき、せりあがってきた胃液を吐き出す。
胃には何も入っていないはずなのに。いや、入っていないことが問題なのか。
普段まともに食事が摂れていない身体で無理をしたせいか、不調が一気に押し寄せてくる。
『いやいや……ここまできて動けませんはないだろ普通。どんだけ空気読めないんだよ』
もう少し。あと少し頑張れば終わるのに。それなのに身体は動くことを拒否している。
『ふざけるな……言うこと聞けよ。俺の身体だろうが。少しくらい無理したっていいだろ!』
こんなところで座り込んでいる暇なんてない。早くエレンたちのところに行かなければ。
早く、早くと急く気持ちとは裏腹に頭が徐々に混濁していく。
このままでは意識が落ちる。
『ダメだ……それは……踏ん張れ……!終わったらちゃんと休むから』
強い眠気に襲われながら足に力を込める。ゆっくりと身体を起こして前方を見やると、エレンが今まさに穴を塞ごうとしていた。
エレンの咆哮と共に穴が岩で塞がれる。その光景を目に焼きつけるように見つめた。
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