第八幕
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こんなに自由に飛び回るのは久しぶりだ。
前は縦横無尽に飛び回っていたのに。
目に付いた巨人を倒していくうちに辺りは巨人の蒸気だらけ。巨人に食われそうになっていた兵士を助けては、屋根に放り投げるを何度も繰り返す。
「た、助かった……!」
『おーう。気をつけてな』
助けられる命は助けるが、間に合わないと判断したときはそれまでだ。手を伸ばさない代わりに即座に仇はとっておく。それがせめてもの償い。
「元調査兵団というのは……本当だったんだな」
『え、信じてなかったのかお前』
ある程度の巨人を片付けたところでイアンが飛んできた。周囲を見渡して息を飲んだ彼はゆっくりと口を開く。
「いや、信じていなかったわけではない。だが、憲兵に異動したということはその……」
『ああ、調査兵団で使えないやつって思われてたのか』
「すまない……」
『そう思われても仕方ない。兵団の中で一番クソみてぇな集まりだろ』
「おい。彼らも彼らなりに仕事を全うしているだろう」
『あれのどこが?昼間っから酒飲んでダラダラしてるやつらのどこが仕事してるって?兵士よりも街の人達の方が仕事してるだろうが』
「そこに異動したのはクラウンじゃないか。そんなに文句を言うのなら何故憲兵団に行ったんだ」
『なんでって言われてもなぁ』
理由なんてない。調査兵団を離れたい一心で抜けると言ってしまったのだから。
今思い返せば、兵団の異動手続きがやたらとすんなりいっていた。別の兵団に移されるなんてことは滅多にない。優秀な人材の引き抜きは訓練兵の時に行われることが多い。
そもそも憲兵団に入ること自体が難しく、訓練兵でも成績上位の者が選ばれる。成績なんて気にしていなかった自分は訓練兵時代、憲兵団に入ろうなんて考えもしなかったくらいだ。
それなのに異動願いをエルヴィンに言った時、引き止められることも無く憲兵へと移された。
『裏切り者とかって思われてんだろうな。益々会いたくねぇわ』
異動の際、ハンジからとても寂しがられたが、エルヴィンとリヴァイには何も言われなかった。それなりに交流があったから何か言われるかと思っていたけど。
『これからどうしようかな』
「ピクシス司令に話してみるといい」
『おっさんに?』
「おっ……。ゴホン。ピクシス司令だ。あの人なら受け入れてくださるだろう。今回の作戦により兵士の数も減る。その補充として駐屯兵団に入ればいいさ」
『駐屯兵団か』
まさか兵団全部を渡り歩くことになるとは。
『わあ……人類初じゃねぇか?兵団のたらい回し』
「人聞きの悪い言い方をするな!」
『だってそうだろ。待てよ、駐屯兵団でも要らねぇってなったらどうすんだよ』
「その時はその時だ。お前なら街でもやっていけるさ」
『兵士しか経験してないのに?』
街で仕事をして食べていく想像が出来ないわけじゃない。やろうと思えば仕事は見つかるかもしれないけど、なんとなく不安が残る。
『仕事出来んのかな』
「先のことを考えるのは後だ。今は巨人を倒すことを考えてくれ」
『そっちから話振ってきたのにそれは酷くない?』
人の将来を不安にさせたのは誰だ。今は巨人よりも未来予想図を描くのに必死なのに。
目の前をフラフラと歩く巨人の呑気な顔にイラッとし、カイは怒りのままにアンカーを飛ばす。
『お前らは良いよなぁ。仕事せずにふらふら散歩しやがって!』
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