第八幕
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「リコ班!後方の十二メートル級をやれ、ミタビ班と俺の班で前の二体をやる」
「なんだって!?」
「指揮権託されたのは俺だ!黙って命令に従え!」
「くっ……!」
イアンの判断に物申そうと一歩踏み出したリコだったが、作戦の指揮を執っているのをイアンだと思い出し、苦虫を噛み潰したように顔を歪める。
「イェーガーを無防備な状態のまま置いては行けない。作戦を変える。イェーガーを回収するまで彼を巨人から守る。彼は人類にとって貴重な可能性だ。簡単に放棄できるものではない。俺たちと違って彼の代役は存在しないからな」
「あの出来損ないの人間兵器のために今回だけで数百人は死んだだろうに、あいつを回収してまた似たようなことを繰り返すっての!?」
「そうだ。何人死のうと何度だって挑戦すべきだ!一度の失敗で諦めるわけにはいかない。俺たちにはもう残されていないんだ。ここであがかなければ、人類のできることなんてもうない」
イアンの必死な説得を聴きながらカイはひっそりと頭を抱える。
確実にこの言葉はカイの発言が影響してしまっているだろう。壁の上を走っていた時にイアンとの会話が。
『(いや確かに一度の失敗で恐れるなとは言った。言ったけども)』
まさかこんなにもイアンの背中を押しているとは思わなかった。これでは単に励ましただけではすまない。虎穴に入らずんば虎子を得ず、まさしくその状態だ。
こうなってしまった責任は少なからずカイにもある。
「後ろの十二メートル級は私の班に任せて」
「前方の二体は俺たちがやるとして、残りの五メートル級はどうするんだ」
ミタビの言葉にイアンは唇を噛み締める。
『余ったやつが処理すればいい話だろ?』
「クラウン!一人で二体の巨人を相手にするなど無謀だ!」
「カイ!それなら私も!」
『ミカサはイアン班、もしくはエレンに近づいてくる巨人を倒せ。こっちは俺一人で十分』
「でも!」
なおも食い下がろうとするミカサにビシッとデコピン。
『しつこい。だからエレンにキレられるんだろうが。まったく。これくらいのときは話しかけても頷くことしかしてなかったのにいつの間にそんな喋るようになったんだお前は』
自分の腰辺りに手を置いて"このくらいの時は可愛かったのに"と呟くと、ミカサはムッとした顔。
「あの時はただ、」
『いいから。ほら行けよ』
しっしっ、と小バエを払うが如くミカサを追い払う。イアンから戸惑いの視線を向けられ、これはカイが動かなければ二人とも動かないと察した。
『巨人を一掃したのちエレンの回収な。了解、班長』
「クラウン!!」
「カイ!待って!」
二人の声を背にして飛び立つ。フラフラと歩いている巨人を見つけてはその首元にアンカーを突き刺して近づき、なんの苦労もなく項を削ぎ落とす。
『あいつら俺が元調査兵団だってこと忘れてんだろ!なんであんな心配されんだよ。まさかこれか!?憲兵の上着のせいか!?』
調査兵団だったことは知っているはず。それなのにやたらと心配されるのは憲兵の紋様が視界にチラついているせいに違いない。
なんせ、憲兵は駐屯兵団よりも力量が劣っている。巨人を前にして彼らが戦えるとは思えない。
『印象操作ハンパねぇなこれ。どうせ戻れる確証なんてないんだ。ここで脱いでも大丈夫だろ』
刃を屋根へと突き刺して上着を脱ぐ。そのまま放り投げようとしたところで手を止めた。
『持ってても食えない。でも、ここで捨てるのは違うもんな』
兵舎を出た後に貰った菓子を上着のポケットから出す。今まで激しく動き回っていたせいで、何枚かは割れてしまっていたが食べれなくは無い。
落ち着いた時にでも少し口に入れればいいだろう。シャツの胸ポケットに大事にしまってから、上着を放り捨てた。
.