｢クラウン｣


『うん？どうした？』


エレンたちの後方を走っていたカイの隣に先頭を走っていたイアンが下がってくる。


｢この作戦、上手くいくと思うか｣


『さあ。それはやってみないことには？』


巨人に穴を塞いでもらうなんて初めての試み。そんな作戦の指揮を執らされるなんて相当なプレッシャーだろう。なんとか助けてやりたいとは思うが、自分もこれまで経験したことのない事態だからどうすれば上手くいくのかは分からない。


まず、エレンがあの岩を持ち上げることが出来るのか。そもそも巨人になった時に意思があるのかさえ不明なのだから。


｢私はエレン･イェーガーに賭けてみようと思う｣


『いいんじゃないか？期待するのは悪いことじゃない。ただ、期待しすぎるのはちょっとな』


｢クラウンはこの作戦が完遂出来ないと思っているのか？｣


『五分五分ってところだな。出来たら万々歳、出来なかったらできなかったでまた再挑戦ということで』


｢何度も同じことが出来るとは思えないんだが｣


『今いる兵士じゃ無理だろうな。でもそろそろ巨人特化兵団が帰ってくるだろ。そいつらならやり遂げそうな気がする』


調査兵団であれば巨人を倒すことに特化している。駐屯兵団がエレンの護衛につくより、調査兵団のやつらが着いた方が安全性が高まるはず。


なによりあの兵団には人類最強がいるのだ。エレン一人くらい護り切れるだろう。


｢そうか。私たちが失敗したとしても彼らが引き継いでくれるのであれば、この作戦も無意味ではなかったということになるか｣


『最初から無意味だと決めつけるなよ』


｢だが、成功する確率は低いだろう｣


『だから言ってるだろ。やってみなきゃ分からないって。やる前から失敗を想像してたら何も出来なくなるぞ？そんなこと考えてるくらいなら、明日の天気はどうかなぁとか考えてろよ』


｢それはお気楽すぎるだろう｣


『それぐらいでいいんだよ。悩んだところで答えなんて見つからないんだから』


黙り込んでしまったイアンに流石に調子の良い話をしすぎてしまったかと反省。全責任を背負っている者に言うべき言葉ではなかった。


｢それもそうだな。やる前から失敗を恐れていては何も進まない｣


『あ、いやまあリスク管理ってのもあるから、失敗の予測をしておくってのも重要なことで──』


｢信じるべきだ。上手くいくと｣


『俺の話聞いてる？』


何故か自信に満ち溢れた顔をするイアンに口元を引き攣らせる。これはまずい方へと進ませてしまったような。


『（やっべ、変に背中押しちゃったかも）』




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