第六幕
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「そうか。訓練兵の一人が巨人に……人間が巨人になるなど聞いたこともないがな」
「ですが、確かに巨人の項からその者が出てくるのを確認しています!」
「ふむ……人類の敵となるか、はたまた──」
『はたまた味方になるかって?そりゃ調教次第ってところじゃないか?』
「誰だ!」
『やっと見つけた。ったく、随分と後ろの方に居たんだな、おっさん』
トロスト区内全域を回る羽目になるところだった、と笑いかけるカイにピクシスは一瞬驚いた表情を見せた後、和やかな笑みを浮かべた。
「ピクシス司令!お下がりください!」
「構わん。やつは知人だ」
兵士が盾になろうと前に出てくるが、ピクシスはその肩を押しのけてカイの方へと歩を進める。
「久しいな。憲兵に行ったというのは本当だったようじゃな」
『調査兵団とまではいかないが、こっちはこっちでこき使われてるよ。そんなことより、今は巨人化した人間の話だ』
「話は聞いておる。訓練兵が巨人になったとな」
『そ。それの話。まさか即刻殺せなんて言わないよな?』
「どうだろうな。人類に仇なすのであればそれが妥当だろう」
『ということは、人間に害がなければいいってことだ。俺たちに牙を剥くことなく、巨人に対抗出来る駒として飼い慣らせばいい』
「もし駒としての利用価値が無かったらどうするつもりだ?」
『その時はその時だ。壁の外に放り出すでも、首をはねるでもやりようはある。でも、それは今じゃない』
「カイ、暫く会わない間に随分と変わったようじゃな」
確かに以前であれば、もっと違うことを言っていただろう。巨人化したとはいえ、人間なのだから助けてやって欲しいとでも言ったかもしれない。
しかも、見知らぬ人間では無い。あれだけ可愛がっていたエレンが巨人化してしまったのだ。何とかしてやるべきなのに。
『そこまで変わったつもりはないけれど……』
「わしの知っているお前はもっと感情的な考えで動いておったよ。今は……どうやら違うようじゃな」
『そりゃ悪いね。人間、年月経てば考え方も変わるってもんだ。とにかく、今はこんな話をしてる場合じゃない。キッツが考え無しに殺さないよう止めてくれ』
「まったく、老体に鞭打ってここまで来たというのに」
『老体だぁ?だったら酒やめたらどうだ?そうすれば多少は良くなるんじゃねぇの?』
「わしの楽しみを奪うつもりか?」
壁が壊されたというのにピクシスは片手に酒瓶を持って部下たちに指示を飛ばしている。
ただの飲んだくれではないから別に気にはしないが。
「カイ、お前は先に戻るといい」
『あまり遅くならないようにな。じゃないと、部下が一人消えるぞ』
「血の気の多いやつは死期が早まるぞ」
『それは部下に言ってやれ』
ピクシスに背を向けて飛び出す。今頃エレンたちはキッツの部下たちに囲まれているだろう。
ミカサとアルミンがそばに居るから大丈夫だとは思うが、それでも急がねばと普段よりもガスの噴出が多くなる。
もう少しで着く、というところでアルミンの声が聞こえた。
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