第六幕
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「エルヴィン団長!巨人どもを蹴散らしてください!」
周りから浴びせられる声にエルヴィンは眉一つ動かさない。その視線の先にあるのは壁だけ。
そんなエルヴィンをリヴァイはじっと見つめていた。
「見ろ!リヴァイ兵士長だ!」
「一人で一個旅団並みの戦力があるってよ」
エルヴィンの方に民が夢中になっていると思っていたのに、今度は自分の方へと興味が向けられる。黄色い声援にリヴァイは小さく舌打ちを漏らすと、隣に居る者から呆れの言葉。
「みんなの羨望の眼差しも、貴方の潔癖すぎる性格を知れば幻滅するだろうね」
羨望など向けられるいわれはない。ただ巨人を倒しているだけ。あの日、エルヴィンの手を取ったときから。ただ、それだけの話。
「どうだい?カイは居そう?」
「俺に聞くな」
「探してるんじゃないの?壁外調査に行くたびに民衆の中を探してるじゃないか」
背を伸ばしてハンジは周りを見渡す。そばに居た部下に大人しくしててくれと言われても、ハンジは人混みの方を眺めていた。
「今回も居なさそうだね」
「探す必要がどこにある」
「三年だよ?もう三年も会っていないんだよ?壁の中にいるっていうのに、カイに中々会えないじゃないか。心配だと思わないの?」
「何を心配する必要がある」
「聞いているだろう?カイが憲兵でどんな目にあっているかを」
「アイツが選んだことだ。俺たちが口を出すことじゃない」
「そう言って裏で手を出してんのはどこの誰だろうねぇ?」
ニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべるハンジにリヴァイは再度舌打ちを零す。
ハンジの視線が民衆から前方へと向けられたのを確認してから、リヴァイはちらりと人溜まりへと視線を送る。
探したところで見つかるはずもない。それでも無意識に目が動いてはカイの姿を探してしまう。そして何度も後悔しては胸の重みが増していく。
だが、それも慣れてきた。同じことを繰り返せば誰だって自ずとそうなるだろう。
今日こそは、と思う方が愚かなのだ。期待を抱いた分、落胆も大きくなるのだから。
「(別に構わない。生きてるのは知っている)」
カイが憲兵に行ったあとの事も。
調査兵団から抜けてきた臆病者として後ろ指をさされ、時には上官からの嫌がらせも受けていると聞いた時はどうしてやろうかと思った。
憲兵なんて腐りきったところに行かせるべきではなかった。まだ駐屯兵団であれば、カイの能力だって上手く使われたはずだ。
「リヴァイ、あんたさっきから怖い顔してるけど……どうしたの?」
無意識に民衆たちを睨みつけていたらしく、周囲から怯えの表情を向けられていた。
「大したことは無い」
「まったく。カイが抜けてから眉間にシワが寄るのが多くなってるよ」
「うるせぇ」
「帰ったら会いに行ってきたらどうだい?リヴァイなら喜ぶと思うけど」
「必要ない」
壁の外へ行くのだから集中しろと声をかけると、ハンジは不貞腐れたように唇を尖らせる。
ふと、右斜め後方へと目を向けた。部下が緊張した面持ちで壁を見ている。
数年前であれば、そこにカイが居た。部下と違って、お気楽な顔で空を見上げていたはず。リヴァイの視線に気づくと、いつも笑って。
──今日もいい天気だな。
「ああ……そうだな」
そう言い返すのだ。
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