第四幕
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「カイさん、相談があるんですけど……」
ジャンと共に元の場所に戻ると、アルミンが建物の地図を地面に広げて唸っていた。
『どうした?』
「補給室に三、四メートル級の巨人がいるんです。数はきっと七体。そいつらを倒さないとガスの補給ができません」
『立体機動が使えない状態でいかに巨人を倒すか、か。何か案はあるのか?』
「はい。まずリフトを使って中央の天井から大勢の人間を投下します。そして七体の巨人それぞれの顔に向けて同時に発砲して視界を奪います」
『身動き取れなくなった巨人を狙うってことか』
「そうです。全員の命を懸けて巨人を倒すことになります」
アルミンの作戦はとても分かりやすく、そして完璧とも言える。立体機動が使えない中、巨人を倒すのは無謀だ。一歩間違えれば全員の命がここで消える。
そんなプレッシャーの中、アルミンは使えるものを使って計画を立てた。
『今期の訓練兵は優秀な人材が多いな。的確な判断が下せる指揮者に、状況を逸早く理解して策を巡らせる参謀か』
「えっ、いや僕はただ思いついたことを言っただけで……」
『でもこれが最善策だろ?どうだミカサ。実行出来そうか?』
「やらなきゃやられる」
『よし、じゃあ決まり。この案でいこう』
異を唱える理由は無い。アルミンの作戦に賛成の意を示すと、本人は暗い顔で俯いてしまった。
「巨人を仕留める七人に全員の命を背負ってもらうことになるんです」
『気にするな、と言っても無理か。そこは仲間を信じるしかない。ここまでたどり着いた屈強な仲間を』
この場にいる訓練兵は誰一人としてアルミンに意見する者はいない。皆がこの作戦に乗ると決めたのだ。その時点で一人一人が他他者の命を背負う覚悟をしている。
『そしたら俺は補助に回るから。仕留め損なった巨人を倒す係で』
「お願いします」
『はいよ』
それなら刃を持ってこなくては。放ってきた装備を取りに行こうと集団から離れるや否や、クイッと上着が引っ張られた。
「カイ、貴方はリフトの方に行って」
『うん?なんで?』
「巨人は私たちが仕留める」
『それは分かってる。俺はその補欠として準備するって言ったよな?』
何故かミカサに引き止められ首を傾げる。
「立体機動が使えないのは分かってるはず」
『何が言いたい』
「貴方を死なせるわけにはいかない」
だからリフトに乗れというミカサにカイは思わず吹き出してしまった。
『わ、るい……あはは……!いや、うん……そうだな。確かに危ないわ』
「だからっ……!」
『んー、立体機動が使えない状態で巨人を相手にするのは初めてじゃないからなぁ』
「え?」
『項を削ぐのがちょっと難しくなるんだよな。足を潰せば倒せなくはないけど』
「待って。カイ、貴方は憲兵団じゃないの?」
『"今は"憲兵だよ?』
戸惑うミカサに答える。何をそんなに不思議がっているんだろうかと疑問に思ったが、そういえば以前は調査兵団に所属していたということを話していなかったことに気づいた。
『あ、言い忘れてた。俺、憲兵団に入ったの三年前なんだ。その前は調査兵団にいた』
「調査兵団……に?」
カイの言葉に訓練兵たちがざわめき出す。
『ああでも、期待はしないでくれな。三年も間が空いてればそれなりに腕も落ちてるから』
だから先程巨人に掴まれた。元調査兵団ともあろう者があんな無様な姿を晒したのだ。もう誇れるようなものでもない。
『ほら、ガス補充に行くんだろ?それなら下のやつら片付けねぇと』
固まる訓練兵たちに声を掛けて動くように促す。各々準備をし始める中、ミカサだけはその場に立ち尽くしたままだった。
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