第二十四幕
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「カイ……?」
ノックも無しに突然に部屋に入ってしまったもんだから中に居たエレンは何事かとベッドから飛び上がる。慌ててカイの所に来ると「どうしたんだ?」と声を掛けてきてくれる。でも、今その質問に答えている余裕は自分にはなかった。
『(好いてる……?リヴァイさんが?俺を?)』
言葉の意味を理解しようと何度も繰り返す。そしてその時のリヴァイの顔も。
『違う、だろ……なんで、』
「カイ!何があったんだよ」
『なんで俺なんかを……なんで……俺は……』
嬉しいと思ってしまったのか。
リヴァイに好いていると言われた時、信じられないと疑いながらも胸が高鳴った。嬉しいと感じていたのだ。
でも、その後の会話で思い留まった。この想いを受け取ってはならない。自分はリヴァイの好意を受け取れるほど高尚じゃないのだから。
大切な人だからこそ遠ざけなくては。
『俺は……ダメなんですよ……!』
身体から力が抜けて膝から崩れ落ちる。両手で頭を抱え俯いた。
『俺が幸せになっていいわけないじゃないですか!これまでどれだけの人を見殺しにしてきたと思ってるんです!あの人たちの人生を捨てさせておいて、俺だけがこの先のうのうと生きていくなんて許されるはずがない!俺のせいで……俺のせいでシグルドは──』
「カイッ!!!」
ガシッと両肩を掴まれて扉に背中を打ち付けられる。痛みで視界がぐにゃりと歪むが、そのおかげで正気に戻った。
「落ち着けよ!何があったんだ!!」
『エ、レン……』
「誰かに何か言われたのか!?まさか憲兵のやつらがまたカイに手を出したのか!?」
ぼうっとした頭でエレンの言葉を噛み砕く。なんでこんなに怒ってるんだろうと不思議に感じているカイの前でエレンは忌々しげに顔を歪めてドアノブに手をかけた。
「クソッ!待ってろ。俺が言ってくるから!」
『ま、待て!憲兵は関係ないから』
「じゃあなんでそんなに泣いてんだよ!」
『泣いて……る?』
そこで気づいた。目元をグイッと拭うと手の甲が濡れ、自分が泣いていたことに。
「あいつらを庇う必要なんて無いだろ!」
『ちが、本当に違うんだって!』
「何が違うんだよ!そんなに傷つけられてんのになんで!!」
リヴァイに告られてこうなってるなんて言えるわけが無い。いやむしろ言ったらどうするんだろうか。相手が憲兵だからこそ怒ってるわけで、それがリヴァイだったら。エレンは同じように怒るのだろうか。
そもそもなんでエレンが自分の事のように怒ってるんだ。
『なんでそんなキレてんだよ。お前がやられたわけじゃないのに』
「そんなの……!」
『もう大丈夫だから。なんか自分以上に取り乱してる奴がいると冷静になってくる』
ゆらりと立ち上がり、エレンにベッドに戻るように声をかける。だが、エレンは床を睨むように見たままその場に立ち尽くしていた。
『エレン。ほら座れって。まだ調子良くないだろ?』
動かないエレンの手を取ってベッドへと引っ張ろうとするも、その手は乱暴に振りほどかれる。
「なんで……」
『エレン?』
「カイにはまだ俺がガキに見えてるのか」
『は?』
「俺はもう守られるだけの子供じゃない」
『何言って……』
「俺だって好きな奴くらい守りたいんだよ!!」
怒鳴るように訴えられ思考が止まる。今こいつはなんて言った?
『は……?』
「もう守られてばかりなのは嫌だ。今度は俺がカイを守る」
『ちょっと……待て……なんなんだよお前ら』
リヴァイの次はエレンか。
思わずため息をついてしまい、エレンがビクッと身体を揺らす。
『一体……なんの嫌がらせだ』
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