第三幕
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「これからどうすれば……」
『俺がアイツらの気を引くから、その間に全員で基地に突っ込め。残ってるガスを全部使ってな』
「で、ですが、それじゃクラウンさんが!」
『俺はまだガスの余裕があるから。お前らが無事に中に入るまでは動ける』
だから中に入ることだけを考えろと言えば、ジャンは渋々と言ったふうに頷いた。
続々と集まってくる訓練兵たちを見渡す。その中にミカサとアルミンの姿がないことに気づいた。
『キルシュタイン、黒髪の女の子と金髪の小柄な男の子を見なかったか?』
「ミカサとアルミンのことですか?その、ミカサはガスが無くなって……アルミンと仲間のもう一人が探しに行ってます」
ガスが無くなった。それは即ち機動力を失ったということだ。そうなれば生存率は低くなる。
今すぐにでも探しに行きたい。先生の子供をこれ以上失うわけには。後方を振り返って一歩足を踏み出してた所でカイは首を横に振った。
ここでカイが居なくなれば、ジャンたちが危なくなる。彼らを見捨ててまでミカサたちを助けに行くのはダメだ。
『キルシュタイン、悪いが早めに中に入ってくれるか』
「は、はい」
この場にいる訓練兵が基地に入るのを確認次第助けに行くしかない。それまでミカサたちが上手く生き延びてくれることを願うばかりだ。
『さて、準備はいいか?』
「いつでも行けます!」
『よし。じゃあ……幸運を祈る。ジャン・キルシュタイン』
「はい!クラウンさんも」
先程よりかは元気になったジャンにカイは微笑む。
ジャンたちから離れた所へと飛び移り、カイは指笛を鳴らす。その音に反応した巨人は一斉にカイの方を振り向いた。
『鬼ごっこの始まりだ。お前らは俺を捕まえられるかな?』
まるで新しい玩具を見つけた小さな子供のように巨人はカイに向けて手を伸ばす。
「今だ!!」
その瞬間を逃がすまいとジャンは仲間に声をかけて基地へと飛び込んでいく。
『彼を失くすのは惜しいな。出来れば生き残ってほしいけど』
次々に基地へと訓練兵が入り込んでいく。あの場に居た者たちは無事、中に入ることが出来たみたいだ。
『あとはこいつらをある程度処理してミカサたちを……』
掴もうとしてくる巨人の手をすり抜けて背後へと回る。項にアンカーを突き刺して肉を削ぎ落とすのを何体もの巨人で繰り返していると、いつの間にか足元は巨人の死体で山になっていた。
『三年の間があったけど案外いけるもんだな。身体が覚えてるのか』
巨人を倒せるか不安だったが、それは杞憂だったみたいだ。
これならいけるかもしれない。そう思った矢先、基地の方から悲鳴が聞こえ、バッと顔を上げた。
『まずい……!』
ジャンたちが突っ込んでいったところに巨人が群がっている。引き付けられなかった巨人たちが気づいてしまったのだ。
『間に合うか!?』
頭を突っ込んでいる巨人は三体。その内の一体は建物の中に手を入れようとしている。そいつを早く倒さなければ、訓練兵の身が危ない。
残っているガスを勢いよく噴射して巨人へと急接近する。手前の一体は何とか倒せたが、その奥に居る二体に向けてアンカーを飛ばした時、ガスが切れた。
『こんな時にッ!!』
やっとガスの補給ができる。これで壁を登れると安心した刹那にこれでは報われない。
微かに見えた希望がへし折られてしまう。
『そいつらに……手を出すんじゃねぇ!!』
もぞりと巨人がカイの方を向く。ゆっくりと伸ばされる手。
『悪い、俺先に逝くかも』
がしりと巨人に身体を掴まれる。圧迫されて立体機動がギシッと軋んだ。
「クラウンさん!!」
ジャンの悲痛な叫びを聴きながらカイは目を閉じた。
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