第二十二幕
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「カイ、何をしてる」
『何ってそりゃ……準備だけど』
エレンに変装していたジャンがアルミンたちに合流すると言って離れていった後、カイは待機していた仲間に声をかけて自分の装備を受け取った。
「エルヴィン。これはどういうことだ」
「カイには女型の誘導をしてもらう。今頃ハンジたちが待ち伏せているだろう」
「こいつは背中をやってる。忘れたのか?」
「知っている。だが、カイにしか頼めないことだ」
『女型の巨人を特定の位置まで連れてくだけだから』
他の兵士を死なせないようにするにはカイが出るしかない。なるべく民間人がいない道を通って女型をハンジたちの所へ向かわせる。
これは事前にエルヴィンとハンジと話し合った作戦だ。
「こいつの怪我が悪化したらどうするつもりだ」
『そんなに酷くないから大丈夫だっての』
ベルトを装着し終わり、来ていたロングコートを脱ぐ。腰に装置をつけ、鞘をはめたら準備完了だ。
『クソハゲ、いつでも出られる』
「すぐに出てくれ。それと私はハゲてはいないと何度言えば分かってくれるんだ」
『ハゲはハゲだろ』
「カイ、止まれ!」
『まったく……。心配症だなぁ』
引き留めようとしてくるリヴァイの方へと向き直り、持っていたコートを広げる。
『これ預けとく。日が落ちてきたら肌寒くなるから羽織ってろよ』
コートをリヴァイの肩に掛けると、ガシッと腕を掴まれた。
「てめえ、自分がどういう状態かわかってねぇのか!」
『分かってるよ。でも、仕方ないだろ?あれを捕まえるにはこれしかない。俺が"あいつら"にしてやれることはこれくらいしかないんだから』
女型に殺された仲間の無念を晴らすためにはこうするしかなかった。怪我の痛みで動けないなんて言っていられない。ただ、見ているだけなんて己が許せなかった。
『すぐ戻る。だから待ってて』
「……必ず戻れ」
『了解、リヴァイ兵士長殿』
ぽんっと左胸に拳を当ててからアンカーを飛ばす。ガスを噴射して飛び上がると、背中に鋭い痛みが走った。
『やっぱりこの体勢とるとキツいか……!』
まっすぐ背筋を伸ばしていれば気にならない痛みだったが、立体機動となるとまた違うらしい。
『痛み止め飲んでてこれだもんなぁ。飲んでなかったらもっと酷かったのか』
女型を捕まえる時までもてばいい。後はエルヴィンたちに任せればいいのだから。
『まずはアルミンたちと合流するか。女型は動いてるのにエレンが動いてないってことはそういうことだろ!』
巨人化する条件として必要なことである自傷行為と明確な目的。
エレンに女型の正体を話した時に勘づいていた。きっと一筋縄ではいかないと。アニ・レオンハートの名前を出した時にエレンは酷く動揺していたのだ。そりゃ訓練兵を共にした相手となればそうなるに決まっている。
自分だって苦楽を共にした仲間が実は巨人でした、なんて言われたらどうしていいか分からない。
『仲間か……あいつだったら……どうしてたかな』
彼は躊躇いなく殺すだろうか。それとも自分のように戸惑うのか。
『シグルド、お前なら……どうする?』
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