第二十二幕
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『なんか良くないことが起こる日に限って天気良くないか?』
「さあな。そんなに空ばっか見てねぇよ」
『たまには上も見てみるといいぞ。この間夜に見た時なんか星が綺麗だったから』
「ああ、お前が勝手にエレンを連れ出した時か。そりゃ大層良かっただろうな」
さっきからこんな感じだ。何が気に食わないのか、カイの話に対してリヴァイは嫌味を返してきている。
朝からこの調子なので何が原因なのか分からない。これから女型を捕まえるというのに、これでは気分もダダ下がりだ。
『作戦上手くいくといいな』
「でなければ困る。俺たちの首がかかってるからな」
『まあ失敗しても考えはあるさ』
「エレンを抱えて逃げるしか頭にねぇだろうが」
『それ以外何があるんだよ。ナイル・ドークを説得なんて無理だろ。内地の安全のことを考えて行動してるんだろうけど、それだけじゃ壁の中の平和は保てない。クソハゲくらいの突出した考えがなきゃ無理だ。保守的すぎるってのも考えものだな』
「今日はよく喋るじゃねぇか」
『これでも緊張してんだよ。察してくれ』
「能天気野郎が緊張とは。珍しいこともあるもんだな」
『うっせ』
話し続けていないと頭がどうにかなりそうだ。
狭い馬車の中でリヴァイと二人きり。しかも隣に座っているのだから。動き出してからはずっと窓の外を見続けている。うっかりリヴァイの方を見てしまったらまた赤面してしまうからだ。
「カイ、」
『どうした?足が痛むか?』
「お前こそ背中は大丈夫なのか」
『なんとか?』
普通にしていればさほど痛みは無い。ただ、立体機動を使ったら危ないだろう。なるべく使わない方向でいきたいところだが、それもまた難しいというもの。
『俺よりそっちの方がしんどいだろ。歩くのに大変じゃないか?』
「これくらい大したことない」
『そんな強がって大丈夫か?辛いならおんぶするけど』
しまった。つい言ってしまった。
ふざけるなと怒られるかもしれない。リヴァイが今どんな表情をしているのか気になる。でも見れない。もどかしさに身体がムズムズしてきた。
「はっ……それも悪くはねぇな」
『悪くない!?おんぶだぞ!?お前、憲兵の前でだからな!?恥ずかしくねぇの!?』
まさかの返事にびっくりしてリヴァイの方を振り返る。言葉の通り表情は和やかで更に驚いた。
『なんか変なもんでも食ったのか……?あれ、昨日の夕飯なんだった?パンと……魚のソテーと……ええ?』
「そんなに驚くことはねぇだろう」
『驚くだろ……!つか、人類最強背負うとか荷が重すぎんだよ』
「てめえが言ったんだろうが」
『言ったけども!そこはガキ扱いすんなとか、ナメてんじゃねぇとかって言うんじゃないの!?』
「言って欲しかったのか」
『そういう事じゃないけども!!え、なんなのさっきから』
「緊張してんだろ」
『え?』
「人の顔も一切見れねぇくらい緊張してるっていうなら解してやらねぇとな」
『は……はああああ!?!?』
「うるせぇ」
耳を塞いで嫌そうな顔をするリヴァイにカイは口をパクパクさせる。
緊張を解すためにこんなアホみたいな会話したというのか。こちらは本当に変なものを食べさせてしまったかと不安になったのに。
『おま……なん……』
「悪かったな」
『は?え、なにが?』
「そういう意味じゃないのか」
『意味?なにが??』
何故かリヴァイの表情が暗くなる。一体どうしたんだ。
「嫌だったから人の顔見ないんじゃないのか」
『嫌?なにが?え、なんかした?』
「おい……忘れたわけじゃねぇだろうな」
とん、とカイの横にリヴァイは手をつく。
そこで思い出した。リヴァイが言っている言葉の意味が。
『あ、い、そ、れは』
「どうなんだ」
『……分かんねぇ……嫌っていうのはないけど……』
嫌ではない。あのままキスされていたら受け入れていただろう。でも、それじゃダメな気がする。
『なんでしようと思ったんだよ』
「言わなきゃ分からねぇのか」
『分からない。理由があるなら……聞きたい』
教えてくれと頼むと、リヴァイは間を置いてから口を開いた。
「お前のことが──」
「おい、出てこい!」
『……ふ……ふふ』
「チッ……」
ピタリと馬車が止まると、外から憲兵に声をかけられた。あまりにもタイミングが悪すぎて、カイは吹き出し、リヴァイは忌々しげに舌打ちを零す。
『これ、ハンジが来た時と同じじゃん』
「空気が読めねぇやつばっかじゃねぇか」
『これはしょうがない。理由はまた今度聞くから』
「邪魔されなければな」
『それは無理な気がするんだけど』
馬車で笑いあっていたら、痺れを切らした憲兵が扉を開けてきた。早く外に出ろと急かされ、カイとリヴァイは馬車から出た。
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