第二十二幕
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「おい……」
カイを追いかけようと一歩踏み出すと、リヴァイの邪魔をするようにエレンとミカサが立ちはだかる。
「でけぇのが目の前に立ってんじゃねぇよ」
「カイの所には行かせない」
「今はちょっとその……」
ミカサからは睨まれ、エレンはたじたじながらもリヴァイを引き留めようとあれやこれやと言葉を並べている。
その後ろでジャンが呆然としていた。
「お、お前らなにやってんだよ……」
「ジャンは黙ってて」
「黙ってろって……お前ら上官に対して失礼すぎんだろ……」
馬面の割にはまともな兵士だ。そこは称賛するが、止めるのであればしっかりと止めてほしい。
「ミカサ!エレン、何をしてるの?」
ああ、また増えた。確か女型を特定した兵士で……アルミン・アルレルトといったか。
不思議そうにエレンとミカサに声を聞けたかと思ったら、アルミンはリヴァイを見て目を見開いた。
「え……あ、え??」
「アルミン、カイのところに兵長が行かないようにするのを手伝って」
「え?カイさんのところ?」
なんなんだ。まさかと思うがこいつもカイと知り合いなのか。ぽっと出の兵士にイラッとしつつ、ミカサたちの会話に耳を傾ける。
「カイさんに何かあったの?」
「突然叫んでた。顔が真っ赤になっていたから熱があるのかもしれない」
「ええ!?体調崩してるの?それなら休まないと」
「いや、多分あれは……」
ミカサとアルミンが心配している横でエレンだけは違うと呟く。リヴァイとかちりと目があったかと思えば、すぐに逸らされてしまった。
「(こいつ……わかってるな)」
あからさまにリヴァイの方を見ようとせず、ミカサたちの陰に隠れようとしている。
エレンもカイに気がある事は何となくわかっていた。何かと傍に寄っては甘えている。子供の頃からの馴染みだとは聞いているが、それにしても甘えすぎだ。カイもそれが普通になっているのか、当然のように甘やかしている。
それを見させられているこちらの身にもなってほしい。見る度に理由の分からない苛立ちに頭を悩ませていたのだから。今となってはその意味を理解してしまったからイライラが倍増している。
「お前らもういい加減にしろよ!リヴァイ兵長が困ってるだろうが」
「困っているのはこっち。カイの元へ行かせたら何をするか分からない」
なんだそれは。人のことをどう見てるんだ。
心外だ、と言おうとしたが、リヴァイは言葉にしなかった。彼女は自分が審議所でエレンをボコしたことを知っている。その隣に居るアルミンも。彼女らには悪いイメージが付きすぎている。
だから今こうなってるのか。
「兵長が何するって言うんだよ……上官として部下の心配すんのは普通じゃねぇか?」
「この人はエレンを蹴った。そんな人に任せられない」
「いや、でもミカサ、あれがなければエレンは調査兵団に渡らなかった。あれは必要な演出だったんだ。エレンの巨人化の力をリヴァイ兵長が掌握できるという意味では効果的だったんだよ」
今度からアルミンには優しくしようと思った。いや、今からでも優しくするべきだ。こいつはまともな頭をしている。
「それでもエレンを傷つけたことは変わらない。上官だからといって好き勝手していいわけじゃない」
「もういい面倒だ」
カイの顔を見に行くだけでなんでこうもこんがらがっていくんだ。そもそもこの女はエレンのことを一番に考えていたんじゃないのか。なんでカイまで範囲内にあるんだ。
ここにいる人間たちとカイの関係性が全くもって分からない。
「エルヴィン、こいつらを連れて早く帰れ。騒がしいったらありゃしない」
「……クソチビ」
「おい、今なんて言った」
「い、いえ!!なんでもありません!!」
確かに今"クソチビ"と聞こえた。アルミンが必死になって叫ぶが、それを言った人間は分かりきっている。
「クソガキが。調子に乗ってんじゃねぇよ」
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