第二十二幕
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『あれ?ジャンくん?』
「え?あっ、クラウンさん!?」
『久しぶりだなぁ。元気にしてたか?』
「は、はい!クラウンさんもお元気そうで」
翌日、エルヴィンはアルミンたちを連れて古城へと来た。エレンを憲兵団に引き渡さないように。そして女型の巨人を捕縛する作戦を話すために。
『憲兵に行かなかったのか?』
「はい……。クラウンさんも調査兵団に戻ったんですね」
『色々あってな』
トロスト区での一件で気持ちが変わったのだろう。むしろ憲兵に行きたがると思っていたのに。まさか調査兵団に入っていたなんて。しかも壁外遠征にも駆り出されていたとは。
『とりあえず、無事に帰ってきたようで安心だ。お疲れ様。大変だったろ』
「まあそれなりに。クラウンさんは大丈夫だったんですか?」
『俺は、ね』
「あっ……すみません」
『謝ることはねぇよ。犠牲は仕方ない……ってことにした』
エルヴィンと話しているリヴァイの背を眺める。あれから一日経ったけど口をきいていない。色々と聞きたいことがあるけれど、リヴァイを前にすると言葉にならず手が出てしまう。気恥しさで殴ろうとするなんてどういう了見だと言われそうだが。
「クラウンさん?大丈夫ですか?顔真っ赤ですけど」
『へあ!?い、いや、なんでもない!大丈夫!』
ジャンに声をかけられてハッと我に返る。少しでも気を抜けばあの夜のことを思い出してしまうのだ。
近づいてくる真っ黒な瞳、そして唇に感じた柔らかさを。
『うわっ!!!!』
「な、なんすか!?」
『い゙っ、や、なんでもない!悪い!』
「本当に大丈夫なんすか!?」
『だ、大丈夫!!』
動揺して変な声は出るし、手にはじっとりと汗が滲んでいる。なんとか気をそらさなくては、と視線を彷徨わせるとカチリと目が合ってしまった。
じっとこちらを見つめている黒の瞳と。
『ば、』
「ば?」
『バッカじゃねぇの!?』
「バッ!?!?」
頭が真っ白になって何も考えられなくなった末に出た言葉がそんなもんだから、ジャンだけでなくエレンやミカサも何事かと傍に寄ってきた。
「カイ、どうしたの?」
「おい、ジャン!てめえカイに何しやがった!」
「俺は何もしてねぇよ!クラウンさんが急に叫んだんだ」
「はあ?なに言ってんだよ。カイがそんなことするわけ──」
「カイ、なんで顔が真っ赤なの?」
『ま、』
「すごく真っ赤」
ミカサに指摘され、まさかと頬に触れる。じわりと指先に伝わる熱に口元が引き攣った。
「お前ら何を騒いでる」
「あ、いや、これは……」
リヴァイに注意されてジャンが狼狽えながらも弁明しようと身を乗り出す。
「カイ、ガキどもと遊んでんじゃねぇ」
返事しなければならないのに振り向けない。今リヴァイの顔を見たらマズイ気がする。
「聞いてんのか」
『聞いてる聞いてる!ちょっと話してたら盛り上がっただけだから!大丈夫!』
「てめえ、人に背中向けたまま話してんじゃねぇよ」
『は!?べ、つに背中向けようが何向けようがちゃんと返事してるんだからいいだろ!?』
「こっちを向け」
『絶対やだ』
振り向くものか。この顔で振り向いたら何を言われるか分からない。
何とかして顔を隠そうと手で覆う。すると、前にいたミカサとエレンがカイの背後へと回った。
「リヴァイ兵長、すみません。俺たちが騒いでたんです」
「カイは悪くない、です」
「あ?なんだお前ら」
気を遣われてる。歳下に。もう恥ずかしさと情けなさでどうにかなりそうだ。
『あー……悪い。先部屋に行くわ。作戦とかは後で教えてくれ、うん』
なるべくリヴァイの方を見ないように階段へと走り出す。リヴァイが引き留めようとしていたみたいだったが、エレンとミカサが壁となって助けてくれた。
『なんだよ……なんだよこれ……いや、有り得ないだろ!いや、いやいやいや』
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