第二十一幕
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さあっと風が流れる。それさえも今のカイにとっては不快に感じた。
『守るとか言っておきながらこのザマだ。エルドたちを見殺しにした上にエレンも女型に連れ去られてたんだろ?別に誰でも助けられる自信があるってわけじゃない。でも、今回のはあまりにも酷すぎる。職務怠慢もいいところだ』
誰一人として守れなかった。自分でさえ女型に殴られて気を失っていたのだから。
失望されても仕方ない結果だ。
「だからなんだ。それを言ったら俺はどうなる。部下を放ってた上官になるだろ」
『女型の相手してたんだからしょうがないだろ。中のヤツが動き出すなんて誰も予想してなかったんだろ?』
「そっくりそのままその言葉返してやる。お前らもそうなるとは想像してなかっただろうが」
『臨機応変ってのがあるだろ。その場の状況に応じて動けって』
「おい……これ何の話だ」
言われてみればおかしな会話になっている。これでは互いに今日の落ち度を言い合っているようだ。
『あー……うん。やめよう。不毛だ』
「てめえから始めたことだろうが」
『悪かったって。はい。この話はお終い。俺が悪かったということで』
「人の話聞いてたか?いつからお前は鳥頭になりやがった」
『三歩動いてねぇよ』
そこまでバカにされては困る。それにリヴァイだって誰かのせいにすれば幾分かは気が楽になるはずだ。だからそうしろと言っているのに頑なにリヴァイは誰も悪くないと押し切る。
『もういいだろ。誰のせいでもないって曖昧な答えにするくらいなら誰かに押し付けた方が楽だ。その場に居たのは俺なんだから俺のせいにすればいい。自分でも悪いと思ってるんだから』
「カイ」
『文句は受け付けねぇよ。これが一番お前の──』
「いい加減その口閉じねぇと……塞ぐぞ」
胸ぐらを掴まれてリヴァイの方へと引き寄せられる。間近になった瞳は怒りを孕んでいた。
『塞ぐって……』
「グダグダ文句垂れてんじゃねぇ。もう全部終わったことだ。それをいつまでも掘り返すな」
『でも……』
「でももだってもねぇ」
徐々にリヴァイの顔が近づいてくる。こつりと額がぶつかった。こんな至近距離で見るのは初めてのことだ。意外と綺麗な目をしてるんだなぁなんて思っていたら鼻先が触れた。
『リ……ヴァイ?』
「黙ってろ」
目のやり場に困る。どうすればいいんだと焦った結果、カイはぎゅっと瞼を閉じた。
「カイ」
吐息が唇に掛かる。これじゃまるでキスをするときみたいじゃないか。
思わずリヴァイの服を掴んでしまった。何かに縋らないとこの空気に耐えられない。
『(心臓が……痛い)』
バクバクと緊張で鼓動が激しくなる。今すぐ逃げ出したいような、このまま待ち続けたらどうなるのか。
唇にふにっと柔らかいものが押し当てられ──
「リヴァイ!カイ!早くしないと料理冷めちゃうよー?」
「……チッ」
ハンジの声が聞こえたと思ったらリヴァイは忌々しそうに舌打ちをした。ゆっくりと顔が離れていくのを感じてカイは目を開ける。
『あ、の?え?リヴァイ……さん?今のは……』
「戻るぞ」
『いや、は、無視?ま、待て待て!お前これ、無視は、は??』
今のはなんだったんだ。どういう意図でしようと思ったんだ。
状況が理解出来ず、混乱した頭を必死に整理しようとするも、逆に頭がこんがらがっていく。
「……カイ、そのツラどうにかしろ」
『ツラ?え?』
カイをその場に残してリヴァイはそそくさと古城へと戻っていく。一人置いていかれたカイはぽかんと口を開けたまま。
『は……はあ……?』
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