第二十一幕
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『やったわ……』
城から外へと出てきたカイは近くの木の根元に座り込んだ。
リヴァイとエレンに言われるまでまったく気づかないで、いつものように作ってしまっていた。ハンジとエルヴィンが来てくれて助かった。三人だけではあの量は食べきれなかっただろう。
『どうしよう。まだリヴァイにも話してないし……顔合わせづらいし』
城に帰ってきてから一言も話していなかった。休憩もそこそこにして夕飯を作ると言って台所に閉じこもったから。
まだ報告を済ませていないのだ。
『なんて切り出せばいいんだよ。仲間の戦死報告なんて以前はよくやってたはずなのに』
今はどう言えばいいのか分からない。ただ、死んだだけではダメだ。どういう状況だったのかなどを詳細に伝えなければならない。でも、あの時の光景を思い出すと頭が痛くなる。
『紙に……報告書だっていって渡せばいいか……?直接話すよりはまだマシな文章になりそう』
どう書き記そうかと悩んでいると、がさりと草を踏む音が聞こえ顔を上げた。
『リヴァイ……?』
「そんなところで何してんだ」
『頭冷やしてくるって言ったろ。その……食事の件は悪かった。何も考えてなかったんだ』
「今頃ハンジとエルヴィンが食ってるから問題ない」
『あっ、そ』
話が途切れれば城へ戻るだろうと口を閉ざす。暫しの沈黙のあと、リヴァイは城に戻るどころかカイの横にどさりと腰を下ろした。
『向こう戻れよ。あいつらリヴァイに話があって来たんだろ』
「どうせエレンの引渡しの話だろうよ。俺が入ったところで何も変わらねぇ」
今回の壁外遠征失敗により、エレンは憲兵団に引き渡されることになった。多くの犠牲と資金を使ったのに何一つ成果を上げられなかった故に。
『人間一人抱えて逃げるのってどれくらい難しい?』
「さあな。壁の中の人間が全員敵になるのは確実だ」
『だよなぁ。俺はいいけど……エレンがなんて思うか』
憲兵に引き渡されるまえにエレンを抱えて逃げてしまおうか。なんなら拉致したということにすれば、エレンに逃亡の罪がいくことはないんじゃないか。
『そうなったら俺調査兵団抜けるから。除籍手続きよろしくな』
「俺に言うな。エルヴィンに言え」
『誰がクソハゲ野郎に話しかけるかよ』
絶対に嫌だと言えば、リヴァイはいつものようにため息を零す。
「カイ」
『なに?』
「てめえは何も悪くねぇ。結果は誰にも分からなかった」
ああ、やっぱり。
「例え俺がそこに居たとしても同じだっただろうよ」
これだから嫌なんだ。リヴァイと話すのは。
「だからお前は悪くない。エレンが自責の念にかられることもな」
何度も何度も繰り返してきてしまったから。悲しみよりも諦めが先に出てきてしまう。
『リヴァイ』
「なんだ」
『俺はお前に慰められたくない』
一番辛いのはリヴァイの方なのに。なぜ彼はこうやって人の事ばかり考えるんだ。
『頼むから今回は俺のせいだって言ってくれ。じゃないと自分が許せない』
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