第二十一幕
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
古城へと帰ってきたエレンとリヴァイの間に重苦しい空気が流れる。
黙って紅茶を飲んでいるリヴァイをエレンはちらりと盗み見た。
「(俺のせいで……)」
あれだけ賑やかだった食堂はしんっと静まっている。この時間帯であれば、エルドたちが談笑しながら食事を楽しんでいたはず。
それが今ではエレンとリヴァイ、そしてカイの三人になってしまった。
「遅い」
「えっ……あ、そう、ですね」
「飯作るだけにどれだけ時間掛かってんだ」
早く戻ってきて欲しい。リヴァイの独り言で胃がキリキリする。
城に帰ってきたときはカイも一緒にいた。食堂で少し休んでから彼は食事を作りに台所へと行ってしまったのだ。自分も手伝うと名乗りを上げたのだが、カイは一人で大丈夫だと言って置いていった。
それから一時間ほど経っている。早く戻ってこないかとエレンはソワソワしてるし、リヴァイの方は段々と不機嫌になってきていた。
「あいつまさか……」
ぼそりとリヴァイが呟く。カップをテーブルに置いて腰を上げたとき、カイの声が聞こえた。
『お待たせ』
「あっ、カイ……」
『いやー、一人で作るの初めてだから手間取ったわ』
やはり自分もついて行けばよかった。盆を持って食堂に来たカイは疲れた顔をしている。
「やっぱ手伝った方がよかったじゃねぇか」
『いいよいいよ。エレンだって疲れてるだろ?』
大丈夫だと笑うカイに顔をしかめる。カイも疲れているはずなのに。女型との戦闘にリヴァイ班の壊滅。身体的にも精神的にも疲労が溜まっているのに、カイはエレンたちの為に食事を用意してくれた。
こういうときくらいは休んでくれてもいいのに。リヴァイだって文句は言わないはずだ。むしろ休むように言うだろう。カイのことになるとリヴァイは優しくなるから。
「(カイが戻ってきたからリヴァイ兵長の機嫌も良くなるだろ…………え?)」
リヴァイの方へと目を向けると、リヴァイは盆をじっと見ていた。その眉間には深いシワを作って。
どうしたんだろうかとエレンも盆を見る。その上に乗っているものを見た瞬間、ぞわりと鳥肌が立つのを感じた。
「おい」
『ペトラに料理を教わっといて良かったわ。じゃなきゃ、今頃何食べてたんだか』
「カイ、てめえ……」
リヴァイに声をかけられてもカイは聞こえていないのか皿をテーブルに並べようとしていた。
「話を聞け!」
だん!っとリヴァイは机を強く叩く。驚いたカイは何事かとリヴァイを凝視する。
『なんだよ。どうした?』
「お前は人数も数えられなくなったのか?」
『人数?』
何を言っているのか分からないというようにカイは不思議そうに首を傾げる。
「カイ……その……」
『うん?どうした?エレン』
「量が多い……」
『多い?』
盆に乗っている食事の量は明らかに多い。昨日までであればこの量でも良かったが、"今"は多すぎるのだ。
「"三人"しかいねぇのにその量は多すぎる。お前には何が視えてるんだ」
『何って……』
そこでカイはハッとしていた。
『あ、あー……確かに……これは……』
「カイ」
『悪い。考え事してたら……忘れてた』
目を泳がせながらカイはジリジリと後ずさる。ショックが強すぎるのか、うわ言のように何かを呟いている。ボソボソ言っているのでほとんど聞こえないが、時折"ごめんなさい"という単語がエレンの耳に入った。
それは作りすぎてしまったことに対しての謝罪なのか。それとも……。
「カイ、止まれ」
『ごめん、ほんとに……』
「カイッ!」
大きい声で呼ばれてカイはビクリと身を震わす。怯えた表情がとても痛々しく見えるが、声をかけられた衝撃で正気に戻ったのかリヴァイの事をしっかりと見ていた。
『あ、』
「落ち着け。お前は何も悪くない」
先程の焦りの声から一転、リヴァイはカイに優しく声をかける。その声色にカイは安心したのか、身構えていた身体から力を抜く。
『リヴァイ……』
「フラフラするな。怪我をしてるのを忘れたのか?」
『あ……』
「座れ」
リヴァイが座るように促すもカイはその場から動こうとしない。そんなカイに痺れを切らしたリヴァイが立ち上がった時、食堂の扉が開けられた。
.