第263幕
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「元はと言えば新八が悪いんじゃない」
海が居なくなったあと、神楽はボソリと呟いた。
「新八が海の事を突き放すようなことを言わなければ、あんな風にならなかった」
「君だってそうだろ。海さんが暴れた時に止めてくれていたらあの人が幕府から追われることはなかったんだ」
「私が悪いっていうの?新八だって同罪じゃない!」
「俺は必死に止めた。あの人が真選組を飛び出して行ったときだって探し回ったんだからな」
「(何この状況……)」
やっと静かになったかと思えば、今度は新八と神楽で何か言い合いをし始めた。話の内容的に海に関連する話なのだろうけど、互いに何かの責任を押し付けあっている。
「(なんなの?あいつ何したの?暴れたとか飛び出したとかって不穏な言葉しか聞こえてこないんだけど?)」
二人の喧嘩の様子を見ているうちに段々と海の事が分かってきた。
銀時が行方不明になったという知らせが海の耳に届いたとき彼は真選組を飛び出して銀時を探し回った。新八と神楽も共に動こうとしたが、もうその時点で海の消息も分からなくなってしまった。
「(俺を探して迷子になった、が正解だと思うけど)」
海が行方をくらましてから数年後。謎の病気が蔓延し始めたと同時に何故か海は幕府から追われる身となった。その理由が一番気になるところなのだが、二人の話に出てくることは無い。話さなくても分かっているだろうという体でドンドンと進んでしまう。
「それならどうすれば良かったのよ!海を止められるのは……銀ちゃんだけじゃない」
「いない人のことを出したって仕方ないだろう。君がそんなだからダメなんだ。海さんのことは俺が支える」
「はあ!?新八が支えられるわけないじゃない。人のことさっきから悪く言ってるけど、アンタだって同じだってこと知ってるでしょ?」
もう二人の会話から得られるものはなさそうだ。そろそろこの喧嘩を止めないと。
「まあまあ!二人ともその辺にして。ね?ね??」
睨み合う二人の間に割って入るようにして身を滑らせる。左右からキツい視線を向けられたが、銀時は苦笑いを浮かべながら両者の顔を見た。
「さっきからなんなのこのおっさん」
「知らん」
「喧嘩は良くないよ。ここはほら、ちゃんと仲直りしてさ。海──いや、さっきのお兄さんも騒がしいって言ってたじゃん?」
海の名前を出した途端に二人の顔は険しくなる。なんでそんな顔で見られなくてはならないんだと文句を言いそうになった所で時間泥棒の言葉を思い出した。
自分の素性を気づかれてはいけない。そのために銀時の額には特殊な装置が付けられている。神楽が銀時を見て知らないおっさんと言っているあたりから察するに今は見た目が変わっているのだろう。
「騒がしくしてたらまた来るかもしれないからさ。ねっ?」
二人をなんとか宥めようと必死に声をかけるも今度は銀時が怪しいと言い始める。
「貴方さっきから海さんのことを知ってるようだが……誰なんだ」
「私たちのことも知ってるみたいだし。もしかして海を狙ってる奴らの一味か何か?」
「いやいやいや、狙ってるって何よ。俺はその……君たちのことは聞いてたから知ってるんだよ!」
「聞いた?誰にだ」
「さ、坂田銀時から!彼とは義兄弟の契りを交わした仲でね!君たち万事屋のことも知ってるし、彼の恋人のことも聞いてたから!」
自分で言っておきながらとても苦しい設定だと思う。新八と神楽は銀時からそんなこと一度も聞いたことがないと言って益々怪しむ。
「そんなヤツいるなんて銀ちゃんから聞いたことないわ」
「そ、それは……」
「銀さんと義兄弟の仲なら海さんが知らないはずがない。だが、海さんは貴方を見てもなんの反応もしなかった」
「それは一度も会ったことないからだよ!俺も坂田くんから話を聞いてただけで実際に会ったのは今日が初めてだし!いやー、あんなにかっこいい人だとは思わなかったなー」
ははは、と笑って必死に誤魔化そうとしている銀時に新八と神楽はずいっと身を乗り出した。
「海がかっこいいのは当たり前でしょ?アナタもっと褒めるところないの?」
「かっこいいなんて低俗な褒め方はやめろ。あの人はそんな安い言葉で収まるような人じゃない」
「えっ、な、なに?」
「これだから嫌なのよ。海の魅力をちゃんと分かってないやつは」
「それについては同感だ」
責められているのは確かなのだが、なんだかその理由が変わっている気がする。
彼らはぶつぶつと文句を言い合いながら頷き合う。
「(忘れてた。こいつら海大好き組だわ)」
怪しい人間が海に近づこうとしているのを阻止しているのかと思ったがどうやら違う。海の良さを分かっていない田舎者に対して呆れている感じだ。
そんな理由でグチグチ文句言われるのもなんだか疲れる。言いたいことは分かるけど。海が良い男なのは自分が一番分かってる。新八や神楽なんかより。
「それよりここから離れない?」
「「アンタは黙ってろ(黙ってて)」」
「あ、はい……」
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