第276幕
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『これで暫くは動けないだろ』
「流石にやりすぎじゃ……」
『これくらいやらないと動くんだよこいつは』
「自分のことなのに……」
『自分だからこそわかるんだよ』
閃光を斬ることなく何度も蹴り飛ばし続けていたら、ぐったりと倒れたまま動かなくなった。鋭利な殺気は身を潜めて静かになっている。
これくらいまで痛めつけておけば暫くはうごきださないはず。
『出来れば銀時たちのところに連れて行って監視しててほしいが……今は無理そうだな』
戦場の方が騒がしくなってきている。銀時たちが出陣したのかもしれない。
「えっ、じゃあ兄さんこのままにしておくの!?」
『いや、近くに拠点として使ってた廃寺があるはず。そこの前に転がしておけば誰かしらが気づくだろ』
この頃は手当てをする為の道具なんてほぼ無かった。物資の補給なんてなかったし、天人の持ち物を持って帰って凌いでいたくらい。
ここで閃光を斬らなかったのもそれが理由だ。
倒れている閃光の首根っこを掴んで引きずる。隣で朔夜が可哀想に見ていたが気にせず。
『少しは周りを見ることを覚えろ。じゃないと本当に失うぞ』
自分が言えたギリではないかもしれないが、これは覚えておいてほしい。必ずどこかで役立つはずだから。
ズルズルと引きずってたどり着いた廃寺。入口のところに閃光を落として中を覗いてみると、むわっと酒の臭いがして眉間にシワを寄せる。
『なんだこれは』
「臭ッ……え、なに?お酒?」
『みたいだな。誰がこんなことを』
酔いつぶれて転がっているのは見知った顔ぶれの者たち。中には海が率いていた偵察部隊の連中もいて呆れてものも言えない。
「おい」
中を覗いていた海と朔夜に向けて声が掛けられる。
「あっ、誰かきたみた──」
『振り返るな』
後ろを見ようとした朔夜の頭を掴んで止める。
「お前ら誰だ?ここでなにしてんの」
『通りすがりの者だ。子供が倒れていたからここまで引きずってきた』
「子供?それ誰の……って……海!?」
地面に倒れている閃光に気づいたそいつは慌てて駆け寄る。必死に名前を呼んで起こそうとしているみたいだが、閃光は目を覚まさなかったようだ。
『確かに渡したからな。面倒ごとはごめんだ。俺たちはもう行かせてもらう』
朔夜の頭を抑えながら彼の横を通り過ぎる。これでもう彼らが魘魅の所に行くことは無いだろう。
「ちょっと待て」
ガシッと肩を掴まれて足が止まる。
「お前……」
『言っただろ。これ以上は関わらないと』
しつこく海を引き留めようとしてくる青年にため息を零す。これでは土方たちのところへ合流できない。
これもまた仕方なしと海は振り返る。
『悪く思うなよ?』
「は……」
肩を掴んでいた腕を逆に掴みあげ、そのまま背負い投げ。地面に強く背中を打ち付けたものだから、青年は苦しそうに咳き込んだ。
その時、彼はフードの中身を見てしまったらしく目を大きく見開いた。
「海……?」
『人違いだ』
驚いている銀時を蹴り飛ばす。そのままピクリとも動かなくなった。
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