第276幕
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ガキンッ!と金属がぶつかり合う音が辺りに響き渡る。
朔夜と過去の自分のやり取りを見て、海はため息をついた。
『これは抹消したい記憶だな』
ここに朔夜を連れてくるべきではなかった。自分一人で過去の自分を止めるべきだった。
まさかここまで酷いとは思わなかったからだ。
「兄さん!これ本気で僕殺されそうなんだけど!?」
『あー……そうだな。危なくなったら引けばいい』
「引いてる暇もないんだよ!」
まだ会話が出来ているから朔夜に余裕がある。それならば助太刀に入らなくても大丈夫だろう。
それにしても荒すぎる。こんなにも自分は酷かっただろうか。
目の前の敵をただ倒すことだけに集中しすぎている。周りを見ることもせず、眼前の敵だけを見据えて。
『そりゃ銀時に心配されるわけだ。これじゃ猪とかわらない。無様だな』
朔夜とやり合っていた自分が不意にこちらを見る。どうやら海の一言が聞こえてしまったらしい。
それならばと海は笑みを浮かべて続けた。
『殺すことだけに特化した剣はいつか身を滅ぼすことにも気づかないのか。哀れなガキだな。そんなんじゃ大切な友人さえもその手にかけることになる』
『黙れッ!!!』
「あっ、兄さん!!」
過去の自分……閃光は朔夜から海へと矛先を変える。怒りに身を任せて刀を握り、先程と同じように海の首目掛けて刃を振り翳す。
『そんなやり方では俺には勝てないし、そこにいる子供を斬ることも出来ない』
『黙れと言ったのが聞こえなかったか!』
『最近耳が悪くてよく聞こえないんだ。悪いな』
刀を抜くまでもない。閃光の刃を鞘で受け止め、がら空きになった脇を蹴り飛ばす。吹っ飛ばされた閃光は近くの大木に背中を打ち付けて倒れた。
「兄さん!?あんなことして大丈夫なの!?」
『動けないくらいが丁度いい』
刀を振れないぐらいまで痛めつけておけば、魘魅の所に行こうとはしないはずだ。そうすれば銀時が海を助けに来ることもない。
『銀時が魘魅と会うきっかけを作ったのは……俺自身だ』
だから何としてでも閃光を足止めしなくてはならない。でなければまた銀時は死んでしまう。
『あいつにあんな顔もうさせられないだろ』
死ぬ間際に見せた辛そうな顔。海の幸せを願って銀時は別れを告げた。その表情が頭にこびりついて離れない。たとえ未来が変わったとしても忘れることは出来ないだろう。
『俺自身がアイツの未来を奪ったんだ。その罰は受けるべきだろ』
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