第276幕
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「兄さん、本当にやるの?」
『いい機会だろ』
森の中を朔夜と共に歩く。
先程まで土方達と一緒に居たのだが、海は朔夜を連れて別行動をしていた。
「でもなんで過去の兄さんと特訓を?」
『天人たちを相手するよりも有意義な時間を得られると思う』
「そりゃ兄さん相手だから勉強になるとは思うけど。今じゃなくても良くない?」
『今じゃないとダメだ』
今、この瞬間でなければならない理由がある。まだここにいる過去の自分に相手をしてもらわなければならないのだ。
「あ……もしかして……」
朔夜が前方を指差す。そこには木々に隠れるように立っている青年。
『下手に近づくな。もうあっちはこちらに気づいてる』
こちらに顔は向けていないが、確かに向こうは海たちの存在に気づいている。彼は警戒するように刀に手を掛けているから。
『昔の自分とはいえど、無闇に殺気を漂わせすぎだな』
「あれが本当に兄さんなの……?」
『まあ……。とてもやんちゃしてたときのな』
こうして見てみると恥ずかしさしかない。あれではハリネズミと同じだ。常に当たりを警戒して鋭利な刺を張り巡らせて。
時代が時代だから仕方ないとはいえ、あれは味方ですら怯えさせていた。あの状態になっている海に臆せず近づいたのは銀時や晋助くらいだ。
『あっ、いや辰馬もそうだったか。あいつは何も考えずに近づいてきたから蹴り飛ばしてたんだっけな』
「坂本さんって友人じゃなかったの?」
『うるさかったんだよ。でかい声で話しかけてくるもんだから』
ひたすらにうるさかった。辰馬の近くにいると耳が痛くなるほどに。
『さて……相手はこちらを感知してるからいつでも行っていいぞ』
「え……それって」
『やれ』
戸惑う朔夜の背中を押す。にこやかに笑いながら刀を指差せば、朔夜は渋々といったように刀を抜く。
『でも気をつけろよ?』
「何に?」
『この時代の俺は……手加減という言葉を知らないから』
言い終わる前に相手が動き出す。素早い動きで朔夜との距離を縮め、首目掛けて刀を振るってきていた。
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