第263幕
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「な、何だ!?」
爆発音とともにチンピラたちが吹っ飛ぶ。道のど真ん中に出来たのは大きな亀裂。
「雑魚相手に何モタついているのよ。その程度で万事屋の名、名乗るなんて百年早いんじゃないの?」
「チッ……うるさいのが増えた」
建物の上から華麗に降りてきたのは傘を持った女と白い獣。またしても見覚えのある人物。
「ぐらさん……万事屋ぐらさんと定春だ!」
「万事屋ぐらさん!女だてらに最近江戸で暴れ回ってる何でも屋か!?」
「(ぐらさん!?ちょっ……ちょっと待って俺の知ってるぐらさんって……)」
思い出すのは黒いサングラスを掛けた男。妻に逃げられて街中でホームレスをしているまるでダメな男。
「(この人間をかけたグラサンが五年で……)げしゅぺんすとっ!」
まさかあのマダオがこんな風に変わるなんて、と愕然としていた銀時の顔面にめり込む女の靴。蹴飛ばされて地面を転がって壁へと激突した。
「来て早々何やってんだ」
「いや何かコケにされた気がしたから。言っとくけど、私は別にアンタら助けに来た訳じゃないから。たまたま酢昆布買いに通りかかっただけだから。勘違いしないでよね」
中の人のツンデレキャラを上手く使いこなせるほどに成長した神楽は豊満な胸と揺らしながらチンピラの方へと走る。
「(知らねぇ!あんなボンキュッボン俺は知らねぇ!)」
神楽の乱入によってチンピラたちは当初の目的を忘れてその場を去ろうと引き下がっていく。乗ってきたバイクは全て壊れてしまった為、彼らは走って逃げようとしていた。
「お、覚えてろよてめぇら──」
リーダーらしき男が仲間に逃げるように指示した瞬間。どこからか銃声が聞こえた。
「あ……アニキ!!」
「だ、誰だ!」
頭を撃ち抜かれた男はバタリとその場に倒れる。すかさず他のやつがその男を抱え上げたが、その男は二度目の銃声の後に倒れた。
「ひ……ヒィッ!」
どこから飛んでくるか分からない銃に怯えるチンピラたち。身を寄せあって周りを警戒するも銀時たち以外に人影はない。
「これは……まさか!」
「嘘……!」
ただ、神楽と新八だけは彼らとは違う反応を見せた。彼女らは喜んでいるようにも恐れているようにも見える。
「な、なんだよ今度は……」
「下がれ!あの人だったら俺たちでは──」
『騒がしい』
ぽつりと聞こえた声。それは聞き間違えるはずもなかった。
『お前らはどれだけ経とうと変わらないな。いつになったら成長するんだ?』
心地の良い声。一番聞きたかった人の声が辺りに響く。
「なんで貴方がここに居るんだ!」
『居たらダメなのか?』
「それは……」
『暫く見ない間に随分と生意気になったな』
少しの間のあと、銀時たちの周りに強い風が襲う。砂埃が舞い上がって目も開けられない。そんな中で聞こえた刀の交じり合う音。
「ぐっ……!」
「新八ッ!」
『多少は成長したようだが、まだ甘いな』
「海さん……!」
風と共に現れたのは黒のロングコートを身にまとった海。フードを被っているから顔はよく見えないが、姿形は紛れもなく海だ。
「海……?」
『こんなところで仲良くお遊戯会でもしてるのか?お前らは相当暇人らしい』
無感情な声色で海は新八と神楽を責める。
「(なんだ……?こいつは本当に海なのか?)」
そう思ってしまうほど、銀時の知っている海の面影がない。彼は新八と神楽のことをとても大切にしていた。どれだけ悪いことをしてもこんなに冷たく突き放すようなことは言わなかったのに。
「(あれは……!)」
ふと海の右手が視界に入る。その手に握られていたのは海が昔使っていた愛刀。それは高杉が持っていたはずのもの。
「海!私たちは──」
『騒がしいと言っただろう』
かちゃりと音が鳴ったかと思えば、海は銀時たちの前から姿を消す。そして次の瞬間には神楽の前に立って刀を振り上げていた。
「(五年であいつは瞬歩を覚えたのー!?)」
素早い動きを得意としているのは知っているが、あれだけ早く動いているのは見たことがない。まるでどこかのアニメのような高速移動だ。
「海さん!」
海の成長に驚いている暇もなく新八の声で現実へと引き戻される。
「お、おい!お前!」
海の刀は神楽へと振り下ろされようとしている。その刃を慌てて止めに入ると、間近で海と目が合った。
『邪魔をするな。お前も斬られたいのか?』
「お前……」
今まで見たことの無いくらい澱んだ瞳。
「海!やめて!」
神楽の切実な訴えにも関わらず、刀に力が増していく。銀時が盾に使っている木刀がミシッと軋む音が聞こえた。
「おいおい……どーなってんのよこれ」
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