第274幕
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「長かった。ようやくこれで終われる。礼を言うぜ」
死んだフリをして魘魅を突き刺す。ふらふらと後退したのち階段に座り込んだ魘魅は苦しそうな声色で喋りだした。
「俺はお前が来るのをずっと待っていたのさ。世界が崩れていく音を聞きながら……ずっと」
顔を隠していた呪符を外して見えたもの。それは自分と瓜二つの顔。
未来の銀時の姿だった。
「俺を殺れんのは俺しかいねぇだろ」
「お前……」
「見た通りだ。俺は五年後のお前だよ。この世界で怒ったことは俺が……いやいずれお前自身が引き起こす事態なんだ。お前の身体の中にはあの時からやつらの呪いが息づいている。世界を滅ぼすウイルスの苗がな」
──だがお前のその禍々しき手は、いずれその腕に抱いた尊きものまで粉々に握りつぶすだろう。それが鬼の背負いし業よ。愛する者も憎む者も全て喰らい尽くし、この星でただ一人哭き続けるがいい。
その意味は当時よく分からなかった。今ならその意味が分かる。
「あの時、斬った野郎はただの入れ物。魘魅の本体はやつが操るナノマシンそのものだったんだ。やつはその入れ物が壊れゆく時、俺たちの身体に寄生しコアを形成したのち、十年に渡り人間の遺伝子情報を食らい進化していた。そして人間には対抗できねぇウイルスを生成し、この身体から世界中にバラまいたのさ」
自分自身がウイルスの発生源だった。まさかそんなことが起きていたなんて。
「待て……それなら海も……」
魘魅に拐われた時、海は人体実験をされたと聞いた。それは海にナノマシンを埋め込む実験だったのではないか。そうなると発生源は銀時と海になってしまう。
「その時の実験では海にナノマシンは定着しなかった。あいつが発症したのは……俺と一緒に居続けたせいだ」
「それなら新八と神楽だって同じだろうが。なんでアイツらにはウイルスが感染しないで、海には感染してんだよ」
「そんなこと分かってるだろ。空気感染と接触感染じゃ度合いが違う」
接触感染。それは海と恋人になってからするようになったこと。
「じゃあ……俺はずっとアイツに……」
直接ウイルスを体内に入れ続けていたことになる。
何気なくしていた行為が海の死期を早めた。海が白詛に掛かったのは自分のせいだ。
「気づいた時には遅かった。世界にはウイルスが蔓延し、海にもその兆候が見え始めた。俺に出来ることといえば、海から離れて進行を遅らせることくらいだ」
だから未来の銀時は海の前から姿を消した。海が銀時のことを探していることを知りつつも、絶対に会うことのないように身を隠して。
それしか海を守る方法がなかったから。
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