第273幕
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「こんだけ探して魘魅のえの字も出てきやしねぇ」
土手で寝転びながら新八と共にため息を吐く。
雲一つない青空は既にオレンジ色になり、燦々と輝いていた太陽は隠れつつあった。
「見つかったらどうするアルか?」
「んなもん決まってるだろ。ボコボコにしてふんじばって──」
「違う」
ぴしゃりと遮られ、銀時は神楽の方を見やる。
「お前のこと聞いてるアル。全部終わったらどうするアルか」
こちらに背を向けているから表情は分からない。だが、声色からして寂しそうに聞こえる。それでも銀時は嘘をつくことなく素直に言った。
「帰るよ。俺のいた所に。待ってるやつらがいるからな」
元の世界に帰らなければならない。向こうはきっと心配しているだろう。仕事の途中で居なくなったのだ。新八と神楽は必死に探しているかもしれない。
仕事が終わったら一緒に映画を見ようと海と約束もした。早く戻って三人を安心させてやらなければ。
「本当にそっくりアルな。勝手に万事屋再結成させて勝手に居なくなって……全部片付いたら銀ちゃんは戻ってくるアルか?ウイルスが無くなって江戸が元に戻ったら海も戻ってくるアルか?それともお前がいなくなったらまたみんなバラバラアルか?」
未来の銀時が今どこで何をしているのかは分からない。全て片付いたとしても帰ってくる保証は無い。ウイルスが無くなれば海が戻ってこれるのかも怪しい。
海の中にあるウイルスが完全に無くならなければ彼は近いうちに……。
「おいおい何?こないだまで俺と組むなんてクソくらえって言ってたのに。どうした?寂しくなっちゃった?じゃあ銀さん帰ってくるまで俺と万事屋やるか?俺がここに残れば海も残るだろうしよ」
海はもう珍宝が銀時だということに気づいている。あの護衛期間二週間という制限も無くなっているはずだ。でも、海が求めているのはこの時代の"銀時"であって、過去の"銀時"ではない。自分が残って万事屋をやったところで彼は喜びはしないだろう。
それに自分がここに残るということは五年前の海は一人になるということだ。そんなことできるわけがない。
「いやいや、さすがにまずいでしょ。いくら義兄弟と言えども海は銀さんの彼氏でしょ?そんな人と同じ屋根の下でくらすなんてやばいでしょ。何かあったらどうすんのよ。風呂場でばったり会ったら始まっちゃうよ?どこぞのラブコメみたいな展開が始まっちゃ──」
「ホアタァ!!!」
海と脱衣所で鉢合わせをする妄想を繰り広げていたらいきなり神楽に蹴り飛ばされて近くの川へと落とされる。
「珍さーーん!!!」
「やめてよね。海で変な妄想するの。あんたなんかに海が惚れるわけないネ。海はずっと銀ちゃんのこと待ってるんだから。ずっと探し続けてるんだヨ」
だから万事屋に珍宝の居場所は無い。でも、銀時が不在の間、万事屋を守ってくれた人間がいたことは覚えといてやる。
そう言った神楽は寂しそうに笑った。
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