第273幕
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「とはいえ、やっぱそう簡単には尻尾を出さねぇよな」
朝から町中を駆けずり回っているが、厭魅に関する情報は全くと言っていいほど無かった。
あれだけ目立つ格好をしているのだから、目撃情報くらい手に入ると思っていたのに。
『この感じだと土方たちも同じようなんもだろう』
「どうやって探し出せばいいんだよ。そもそも誰も見てないってのがおかしいだろ」
『以前であれば誰かしらの目には留まっただろうが、今は誰かを気にかけている余裕なんてない。当然の結果だ』
「は?じゃあなに?こうなることは分かってたって言うのかよ」
『ある程度は』
予想の範疇だと呟く海に銀時はがっくりと肩を落とす。歩き回った疲れと今の精神的ショックで、もう動けそうにない。
「疲れた。いい加減、腹も減ったし」
『ここから万事屋の方に戻るとなると時間がかかる』
「無理。もう動きたくない」
廃屋の前に置かれている長椅子にどかっと座って口をとがらせる。まるで母親の買い物に付き合わされている子供のようだ。最初から見つかることはないだろうと分かっていたのに、何時間もフラフラと歩かされていたのだから。それなりに疲労だって溜まってきている。
『ガキか』
「今は海の方が年上だからね」
『……確かに』
見た目はさほど変わっていないのに、年齢は銀時より上になっている。だから、年下の自分を甘やかせとでもいうように銀時は子供っぽい態度をした。
「お兄さん、俺もう疲れちゃったから。ちょっと休憩」
『魘魅を探し出してお妙を助けるんじゃなかったのか?』
「そりゃそうだけどよ……」
『腹が減ってはなんとやらか。分かった。ちょっと待ってろ』
銀時をその場に残して海は一人でフラフラと歩き出す。片目が見えていないと言っていたのに何処に行こうと言うのか。
「おい!どこに行くんだよ」
『腹減ったんだろ。お登勢の店まで戻って飯の調達』
「ここから遠いって自分で言ったんだろうが!まともに目が見えてない状態なのに一人で行こうとすんな」
『腹が減ったんだろ?それならお登勢の店まで行くしかない』
「お前を一人で行かせなきゃならねぇ程は減ってねぇよ」
きょとんとした顔で小首傾げる海に銀時は深くため息を吐く。
「少し休めば平気だから」
『休んだくらいじゃ空腹はおさまらない』
「腹より疲労!疲労を第一優先で回復したいの!」
どこにも行かないように海の手を掴んで椅子へと腰を下ろす。
「離れるなって言っただろうが」
『そんな付きっきりじゃないとダメということでも無いんだが』
「それでもダメなものはダメだ。傍にいろ」
『……わかった』
こくりと頷くのを見て、銀時は満足気に微笑んだ。
大人しく隣に座った海と、これからの予定について話し合う。未来に来てから色々と大変だったが、今のこの時間だけは心安らぐ瞬間だった。
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