第271幕
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「それで?いつから白詛になってたわけ?」
『覚えてない』
神楽と新八たちが帰って行ったあと、銀時と海は万事屋へと来ていた。
埃まみれになった部屋の中を見て海は渋い顔をする。
「そんなことはねぇだろ。なんかあんじゃねぇの?急に体調が悪くなったとか、その髪だっていつから白くなってんだ」
『そんなの一々気にしてなかった。気づいたらコレだったんだ』
寝室を開けて布団を取り出した海はまたしても嫌な顔を浮かべる。その理由を知っている銀時は苦笑いを浮かべた。
「銀さんを探し回ってるうちに感染しちまったってことか」
『だろうな』
「でも、白詛って掛かると半月もたないって話だろ……なんでお前……」
『散々弄られた後だ。白詛に対する耐性がついてるんだろ』
「……その"弄られた"って言うのやめない?なんか……卑猥に聞こえるんだけど」
自分の頭の中がおかしいというのは自覚しているつもりだが、海の言葉選びにも多少問題があるような気がしてならない。
人体実験を受けて酷い目にあっていたのは可哀想だと思う。でも、それ以上に本当に実験だけで済んでいたのか怪しい。海のこの見た目で手を出さない男がいるものだろうか。手足を拘束されているやつに反抗的な目を向けられたら……自分なら海にイタズラしてしまいそうだ。
「海さん。あんた本当に実験だけで済んでたの?なんか他のことされてたとかないよね?」
『どれだけ前の話をしてると思ってんだよ。そんなこともう覚えてない』
「思い出してもらっていいですか?その……色々と問題が出てくるんで。海の色々なハジメテは確実に俺だと思うけど、捕まってた時にナニされてたのかはちょっと思い出して欲しいなぁって。その記憶上塗りするからさ。ふとした時に思い出すとかがないようにするからさ。ね?」
『お前さっきから何わけわかんないこと言ってるんだ』
一人で頷いている銀時に海は気持ち悪いものを見るかのような目を向けてくる。
『それより……下に呼ばれてるんじゃなかったのか』
「あ、忘れてた」
海に言われて、ハッと思い出す。源外にお登勢の店に来るように言われていたのだ。
どっこいせと重い腰を上げて、銀時は玄関へと歩く。
『おい』
「んー?どうした?」
ブーツを履き、戸を開けて出ようとしたところで声をかけられる。振り返った先では海が腕を組みながら壁に寄りかかっていた。
『……気をつけて……行ってこい?』
「……うん?うん。下に行くだけだけどね?」
互いにきょとんとした顔。先に声をかけたのは海の方なのに、何故か戸惑いの表情へと変わっていく。
「なに?寂しくなっちゃった?」
『馬鹿なこと言ってないで早く行け』
「はいはい。相変わらず冷たいことで。すぐ戻るから」
『何かあったら叫べ。助けには行ってやる』
「そんなに不安なら一緒に行く?」
ここから下の店まで一分と掛からない。その間に自分が死ぬなんてことは起こらないと思う。それは海も分かっているだろう。
「(この時代の俺が突然消えたからか)」
目を離したらまたどこかへと消えて戻ってこなくなる。それが恐ろしくて堪らない。
「海。ちょっとこっちおいで」
また文句が飛んでくるだろうなと内心思っていた。だが、銀時の予想に反して海は何も言わずに、銀時の側へと歩み寄ってきた。
『なに』
そっと海の頬へと手を伸ばして目の下を親指の腹で撫でる。擽ったそうに顔を背けようとしているのを銀時は後頭部へと手を滑らせて押さえた。
「俺は居なくならないから」
細い腰を抱き寄せる。すると、おずおずと銀時の背へと海の手が回った。
『戻ってこなかったら……』
「大丈夫だよ。必ず戻るから。遅かったら下に迎えに来て」
『……わかった』
「(随分と甘えたになったな。昨日までつんけんしてたのに)」
今では気分のいい猫のように擦り寄ってきている。此方としては大満足なのだが。
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